第6章 The decision is tonight
「忘れたのか?ハグリッドと校長しかこの犬のそばを通れないって言ってただろ?」
ロンの焦る声を無視して、未だに唸り吠えるフラッフィーにゆっくり近づく。自分でも何故そうしているのかわからない。
『フラッフィー…起こしてごめんなさい。扉を守るのがあなたの役目。だから私たちを止めたいのよね?』
近付いてくる私を警戒して、牙をむき出しにするフラッフィー。6つの黄色い瞳が一点に集まる。
『でもね、誰かが私たちより先にハープに魔法をかけて、その扉の先へ行ってしまったの。私たちはそれを止めに来たの』
低く唸る声が段々と小さくなる。3つの頭はお互いを見合いながら、戸惑い始めた。
『お願い。私たちを通して』
強くそう言うと、頑なに動かなさなかった前足がゆっくりと動いた。フラッフィーはしゅんとしながら、だんだんと後ろへと下がっていく。
「すごい!やったな!」
「フラッフィーがの言うこと聞いたぞ」
『フラッフィーありがとう。大丈夫よ、怒られるのは私たちだから』
真ん中の頭に向かってゆっくり手を伸ばす。ちょうど鼻の下に手が届いたので、そこを優しく撫でる。頭を撫でたいが大きすぎるのはそれは難しい。フラッフィーは「ワウ〜」と小さく鳴いた。
「、早く行こう」
『うん』
いつの間にかハリーとハーマイオニーは既に扉の下へと姿を消していた。ロンに声をかけられ、急いで後に続いた。扉の向こうにはハシゴはなく、意を決して飛び込む。思っていた衝撃はなく、代わりに少し弾力のある何かが体を受け止めてくれた。室内なのに真っ黒なツルが沢山生えている。
「ツルがあって助かった」
『確かにそうだけど、ここ行き止りよ?…わあっ!』
突然蠢き出した無数の黒いツルが、身体に巻き付き自由を奪っていく。早く抜け出そうと藻掻くが、容赦なく巻き付く力が強まっていく。
「これは悪魔のワナよ。もがかないで落ち着いて。もがくと死が早まるの」
「それなのに落ち着けだって?」
ハーマイオニーを見ると、確かに私たちより巻き付く力が弱いように見える。彼女の言葉を信じて力を抜くと、ツルの力も弱まり、気付くとツルに解放されていた。