第5章 Happy Holiday
ハグリッドを先頭に森の中へと足を進める。高くそびえ立つ木々とうっすらと立ち込める霧が、不気味さを強調させている。こんな場所で一体なんの仕事があるのだろうか。
何かを見つけたハグリッドが、ボウガンを倒れた木に置く。地面に零れている液体。一瞬水たまりのように見えるが、よく見るとまるで液体化した鏡のような銀色のそれ。ハグリッドが指で触る。少し粘着質なのか、ねちゃねちゃと音が聞こえる。
「ハグリッドそれは?」
「これを探してた。よく見ろ。ユニコーンの血だ 」
カサリと枝と草を踏む音が聞こえる。風に揺らめく音ではない。左を見ると黒い影のようなものが、森の奥深くへと姿を消した。自然と足が後退する。ちょうど後ろにいたハリーと軽くぶつかり、彼の両手が肩を支えてくれた。ハリーも同じ方向を見ていた。もしかしたら同じものを見たのかもしれない。
傷ついたユニコーンを探す、これが仕事だ。今から二手に分かれてユニコーンを探す。ハーマイオニーとロンはハグリッドと、私はハリーとドラコと行くことになった。ドラコの申し出により、臆病なファングも同じチームに加わった。
「父上に言いつけてやる。こんな仕事!」
「まさかとは思うけど、もしかして怖いの?」
「ふざけるなポッター」
仲が悪いのはこれでやっとわかった。こんな怖い場所で言い合いをしなくてもいいのに。両サイドから飛び交う相手を挑発するようなな言葉。ありがたいことに、真ん中に挟んでくれたので、少しだけ恐怖心が和らいだ。と言っても本当に少しだけだ。また聞こえてくる生き物の鳴き声。
『……私は正直怖いよ』
「大丈夫だよ、。僕がいるから」
「何言ってるんだポッター。は僕がいるから平気なんだ」
『う、うん。ありがとう、2人とも』
慰めてくれるのはありがたい。怖くないように手を繋ごうと誘われたが、さすがにそれは恥ずかしいので、2人の裾をちょんと掴ませてもらった。
ファングも守ってくれようとしているのか、私の前を歩いている。
だいぶ奥まで来たと思う。立派な木の根が張り巡らされている。前を歩いているファングが止まり、何かを見つけたのか低く唸り始めた。
「どうした?」
『ドラコ?』
何も言わないドラコを不思議に思い、その視線を追うと、そこには横たわったユニコーンと、黒い何者かがいた。