第5章 Happy Holiday
明らかにユニコーンの首から血を啜っているそれ。黒いマントを羽織るそれを目にした瞬間、鎖骨の傷が痛み始める。ハリーも同じように額に手を当てている。それはこちらの存在に気付いたようだ。ドラコは叫びながら、ファングとともに走り去ってしまった。
『うぅ』
逃げたいのに逃げては行けないような感覚。それはゆらゆらと近付いてくる。ハリーが咄嗟に私を庇うように前に出てくれたが、その足もジリジリと後退している。足元にあった太い枝に躓き、しりもちを着く。もう後ろがない。
そう思った瞬間、上から馬の蹄の音が聞こえてきた。馬の下肢に人間のような上肢。ケンタウロスだ。突然現れたケンタウロスのおかげで、黒い者は逃げていった。
「ハリー、。森を出なさい。森の住人は皆君たちを知っている。夜のこの森は危険だ。特に君たちにはね」
「さっきのあいつは何者?」
「恐ろしい怪物だ。ユニコーンを殺すのは大罪。その血を飲めば死の一歩手前でも命はよみがえる。だが代償は大きい」
『それって…そこまでしてユニコーンの血を飲むのって… 』
「思い当たりが?」
ここまで話したところで黒い者の正体が判明した。ハリーと私の傷が酷く傷んだ理由も当てはまる。
「学校が守っているものをしっているかい?」
「『賢者の石』」
生命の水を生み出すその石を学校が守っている。それを狙ったヴォルデモートが学校の近くに来ている。
「ハリー、」
ハグリッドたちと合流したことにより、張り詰めていた緊張がゆっくりと解けていった。フィレンツェと呼ばれたケンタウロスは、ゆっくりと森の奥へと姿を消した。
ゆっくりとユニコーンに近づき、そっと頭を手を添える。温かいはずの体温はもう無い。ひんやりとした体を優しく撫で、せめて安らかに眠れるようにと目を閉じて祈った。
罰則の仕事が終わり、グリフィンドールの談話室へと戻る。身体にしみる暖炉の温かさがとてもありがたい。
二手に分かれた後に見たものをロンとハーマイオニーに話す。
「例のあの人があの森に潜んでいるの?」
『私たち見たの』
「ユニコーンの血で生きてる」
スネイプ先生がヴォルデモートのために石を狙っている。その石があればヴォルデモートは復活できる。