第5章 Happy Holiday
冬休みが明け、久しぶりにホグワーツが人で賑わう。静かなホグワーツも神秘的でいいが、やっぱり人が多い方が明るい雰囲気になる。
私たち4人は再び図書館へ通いつめていた。ハーマイオニーがバンと机に置いた軽い読みものを開く。そこにはニコラス・フラメルについて記載されていた。閲覧禁止の棚に行ったのは、ただの肝試しに終わったらしい。
賢者の石を造った人物。全ての金属を黄金に変え、飲むものを不老不死にする生命の水を生む力がその石にはあるらしい。フラッフィーが守っているのは賢者の石だ。それが判明した時、私たちが向かうべきところはもう決まっていた。
「ハグリッド」
「悪いが今日は遊んどる暇がない」
賢者の石の話だよ、と見事に声を揃えて言うと、ハグリッドは一度閉じた扉を開いてくれた。
何故かエプロン姿のハグリッドの口から溢れ出る情報。賢者の石は大勢の人によって守られていて、フラッフィーのそばを通れるのはハグリッドとダンブルドア先生だけらしい。
そばに寄ってきてくれたファングの頭を撫でていると、鍋の中の何かがカタカタと動き出した。料理をしている訳では無いようだ。ハグリッドが鍋から取り出した丸いもの。机の上に置かれたそれをマジマジと見る。明らかになにかの卵だ。
「僕知ってるよ。でも、これをどこで?」
「パブで出会ったやつがこいつを持て余しててな」
勢いよく卵の破片が飛び散る。蒸気と共に現れたのはトカゲに羽が生えたような生き物──ドラゴンだ。無事に孵化したドラゴンを嬉しそうに見つめるハグリッド。彼の名前はノーバートというらしい。ハグリッドが顎を撫でると、口から火が出て、彼の立派な髭に着火するが、大事にはならなかった。
きゅう、と可愛らしい鳴き声でこちらを見るノーバート。ゆっくり手を伸ばすと、ぴょんと手に乗り、だんだん上へと昇ってきた。生まれたばかりとは思えない身のこなしだ。肩に乗るドラゴンの赤ちゃん。左手を差し出すと素直に手のひらに乗ってくれた。そのまま両手で受け取り、指を動かして遊ぶ。
「すっかりに懐いたね」
『火は吹かないでね』
「…誰だ?」
窓を見て呟くハグリッド。同じ方向を見ると、藍色にプラチナブロンドが見えた。ドラコだ。