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もうひとつの古傷【HP】

第5章 Happy Holiday



 ハッと思い出したように手鏡を見つめる。あの時確かにフィルチ先生を映していた。この鏡は次に会う人、もしくは近くにいる人を映すのだろうか。
 『ねぇ、ハリー。この鏡どう思う?』
 鏡を見たまま問い掛けるが、応えはない。不思議に思い、赤いセーターを探すと、この部屋に置いてある巨大な鏡の前に立っていた。鏡をじっと見つめるハリーの隣に立つ。
 『…ハリー?どうかした?』
 「…この鏡見て、僕のママとパパだ」
 言われたとおり鏡を見るが、そこにはハリーと私の姿だけ。ハリーのご両親らしき人は映っていない。
 『見えないよ』
 「ここに立って見て、ほら!」
 鏡の真ん中に立つように促される。すると、両サイドにうっすら浮かび上がる人影。髪と目の色がどことなく似ている女性と男性。
 『……お母さん?お父さん?』
 鏡に映る2人は優しいほほ笑みでゆっくりと頷いた。ハリーのご両親も自分の両親も見たことないからはっきりとは言えないが、この2人は私の両親だ。
 「ほら、見えたでしょ?」
 『うん…でも、私の両親だ』
 「え?」
 不思議そうに鏡を見るハリー。私だけに見えているお父さんが、ハリーの頭を撫でる。その様子が嬉しくてつい笑ってしまった。

 この巨大な鏡は両親を映すものなのか。ハリーとそう考えていたが、ロンにも見てもらうと、別のものが見えたらしい。ロンは未来を見せる鏡なのか、と嬉しそうに話すが、その可能性はゼロに等しい。

 それから冬休み中、何度かハリーと2人で、あの鏡の部屋へと足を運んでいた。お互い何も言わず、ただ鏡の前で立ったり座ったりするだけ。それだけで何かが満たされていくような感覚がした。
 「また来たのかね?」
 突然の声に驚く。いつの間に居たのか、ダンブルドア先生がいた。世界一の幸せものがその鏡を見ると、いつも通りの自分の姿が見える、というヒントによってこれがどういう鏡なのかがわかった。見る人の望みを映す鏡。ダンブルドア先生は、心の奥に秘められた何よりも強い望みを、と話した。
 この鏡は別の場所へ移される。この鏡を探してはならん、と釘を刺され、何も言えなくなる。


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