第5章 Happy Holiday
パジャマのままだが、ハリーとロンしかいないので気にせず階段を下りる。ハリーのプレゼントは銀色の袋に包まれている。自分の名前が書いてある箱を手に取り、暖炉の前のソファへ腰掛ける。箱の上に置いてある手紙を手に取り、中身を読む。
「お父さんから預かってた物を君に返す時が来た。上手に使いなさい」
『…同じことが書いてある。私のはお母さんから預かってた物、だけど』
差出人の名前が無いそれ。箱の蓋をそっと開けると、年季物の手鏡が入っていた。少し錆びている手鏡。取り出して自分の顔を覗くが、そこには誰も写ってなかった。
『なにこれ?』
「はなんだった?」
百味ビーンズを摘むロンに聞かれるが、よくわからない。姿を映さない鏡、と応えると肩を竦めてハリーの方を見た。ハリーのプレゼントは古いマントのようだ。試しに羽織ったハリーの姿を見て目が点になる。マントを羽織った体が透けているのだ。ハリーの首から上だけ宙に浮いているように見えて、軽くホラーだ。
「知ってるぞ!それは透明マントだ」
「僕は透明?」
『すごい!ちょっと触ってもいい?』
ハリーのお腹があるだろう場所をつんつんと触る。何も見えないが、確かにある実体の感触に不思議な感じがした。お腹がくすぐったかったのか、その仕返しに、私の髪の毛が静電気のように上に上がる。ハリーの腕だ。
「誰から?」
「名前は書いてない。ただ、上手に使いなさいって」
『私の手紙にも書いてるんだけど、使い方がわからないの』
手鏡を2人に渡す。2人も同じように鏡を覗き込むが、そこに見えるのはくすんだ銀色だけ。この鏡についてはロンも知らないらしく、なんの情報も得られなかった。
透明マントを羽織り姿を消すことで、閲覧禁止のコーナーへ侵入することが出来る。上手に使いなさい、と書いた人物は私たちの現状を知っているのかはわからない。ただ、与えられたのならそれを上手く利用するに限る。
鏡の使い方は謎のままだが、もしかしたら使い道があるかもしれないと思い、ハリーと2人で、夜の図書館へと向かった。もちろん目的は閲覧禁止の棚だ。
「、大丈夫?待っててよかったのに」
『大丈夫よ…でもちょっとドキドキするね』
誰もいない夜の校舎。禁じられた本のコーナー。まるで肝試しをしているような感覚だ。