第4章 Not surprised
翌朝。今日はクディッチの試合がある。ハリーは初めての試合に緊張しているのか食欲があまりない様子だ。フォークが進まないハリーに声を掛けたのはスネイプ先生だ。クディッチの対戦相手はスリザリン。なぜスネイプ先生はここまでハリーに突っかかるのだろうか。
歩くスネイプ先生の後ろ姿を見る。足を怪我しているのか、軽やかな足取りではなかった。
「…トロールを中に入れたのはスネイプ先生だよ。みんなの気を散らそうとして犬に足を噛まれたんだ」
「なぜ犬に近づくの?」
「ハグリッドは金庫からなにか出した。学校の秘密だって」
『つまりその秘密をスネイプ先生が狙ってるの?』
ハリーはほぼ確信しているように見える。確かにスネイプ先生は、正義の味方というより悪役が似合っている気がする。でも、本当にそうなのだろうか。大きく息を吐くと、フクロウの鳴き声が聞こえてきた。体より何倍も大きい荷物を運ぶそのフクロウは、ハリーのフクロウ──ヘドウィグだ。珍しい時間帯の郵便に戸惑いつつ、早速中身を確認しようと紐を解いていく。急に肩に重みを感じ、横を見るとヘドウィグが肩で羽を休めていた。
形からして何となく予想はしていたが、案の定中身は箒だった。ただの箒じゃない、とロンが興奮気味で話している。
『お疲れ様、ヘドウィグ』
ふわふわの羽根を撫でると、その指を甘噛みされた。なんて可愛いんだ。
ゲートから箒に跨る選手がでてきた。赤と金で出来た旗を振る。いよいよクディッチの試合だ。競技場は熱気で溢れていて、それに負けじと大きな声を出す。フーチ先生がボールを上げたのを合図に試合が開始される。
ハリーにとって初めての試合。順調にグリフィンドールがゴールを決めていく中、まずは様子見をしようとしているのか、ハリーは上空から試合を見守っていた。グリフィンドールが優勢と思われたのもつかの間。正々堂々とは言い難い方法で、追い上げてくるスリザリン。仲間がどんどん離脱していく。
『ハリー!スニッチを追って!スニッチよ!』
届くかどうか分からないが精一杯叫ぶ。一瞬目があったような気がした。ようやくハリーが動き出したと思ったら、ハリーの箒がまるでハリーを振り落とそうとする動きをし始めた。