第4章 Not surprised
トロールだ。ハーマイオニーに手を引かれ、急いでトイレの中へと身を隠す。だが姿を見られているのでもう遅い。木製のトイレの仕切りは、トロールが大きく振り回した棍棒によって、簡単に壊れてしまった。
「キャアアアア!」
ハーマイオニーが悲鳴をあげる。悲鳴をあげるほど余裕が無い私は、震える手で頭を隠した。強く扉を開ける音がした。そこにはハリーとロンの姿が。
「!ハーマイオニー!逃げろ!」
瓦礫の中を匍匐前進で進む。それでもトロールは棍棒を振り回している。ハリーたちが瓦礫をトロールに投げつけている間、水道側へ避難しようとするが、ハーマイオニーより一歩遅れた私を、トロールは見逃さなかった。
『っ、わあっ!!!』
何倍も大きいその左手に捕まり、なんとか脱出しようとするがビクともしない。トロールはマジマジと私を見て、低い声で唸っている。もちろんトロール語なんてわからない。目的はハーマイオニーなのか、トロールは変わらず棍棒を振りかざす。もう一度振りかざそうとしたとき、棍棒を掴んだハリーがトロールの肩に乗った。
ハリーを振りほどこうとするトロール。その反動でハリーが持っていた杖がトロールの鼻に強く突き刺さった。嫌な音がした。ブンブンも振り回され、目が回る。突然お腹を掴む力が弱まったと思えば、私を掴んでいた手が今度はハリーを捕まえた。
『いたっ!』
しりもちを着き、急いで離れようと後退りをする。しかし今度はハリーが捕まり、トロールは棍棒をハリーに向かって振りかざした。なんとかハリーは棍棒を交わすが、どうしたらいいのか分からない。「何でもいいからなにかしろ」というハリーの言葉を聞いたロンは杖を取りだした。そして、ハーマイオニーに指摘されたあの呪文を唱える。
それは見事成功し、宙に浮いた棍棒で頭を打ったトロールは気を失って倒れた。恐る恐る近付くが反応はない。
「怪我はない?」
いつの間にか隣にいたハリーが、優しく肩に手を置く。うんうんと頷くと、少し笑って自分の杖を回収した。
遅れてきた先生たちにお咎めを受ける。私たちを庇うように、これは私のせいだとハーマイオニーは話した。