第4章 Not surprised
「ハリーの箒がヘンだ」
真後ろでハグリッドの焦る声が聞こえる。明らかにあの箒の動きはおかしい。かと言ってそれを止める術を知らないので、どうすることもできず、ただハリーが落ちないように、見守るしかできない。
大きな双眼鏡を覗いていたハーマイオニーが、スネイプ先生が呪文をかけている姿を見つける。にわかに信じがたくて、ハーマイオニーから受け取った双眼鏡を職員の観客席へ向ける。確かにスネイプ先生は口を忙しなく動かしている。
「任せて」
観客席を離れるハーマイオニー。彼女は私の知っている限り一番頭が切れる。何をしようとしてるのかはわからないが、今はハーマイオニーに頼る他ない。
双眼鏡から見えるハリーの箒の動きが、落ち着いたように見える。そのままもう一度職員の観客席を見ると、スネイプ先生のローブが発火していた。ハーマイオニーだ。ハリーはなんとかバランスをとり、再び箒に跨った。勝負はまだこれからだ。
ここからでは金色は見えないが、スリザリンのシーカーと並んで飛行している様子から、彼らの目の前にはスニッチがあることがわかる。粘り強く追いかけたハリーはなんと箒の上に立ち、手を伸ばしている。バランスを崩したハリーが箒から落下する。地上からあまり高くなかったので、大きな怪我をしているようには見えないが、お腹を抑えて体は波打っている。
『なんだか気持ち悪そう』
「吐くのか?」
その口から吐き出したのは胃の中のものではなく、丸く金色に光る物体。両手に受け止めたそれが意味するのは、ゲーム終了の合図。グリフィンドールの勝利だ。
『やった!ロン、勝ったね!!』
「グリフィンドールの勝ちだ!」
クディッチ好きのロンと小さなジャンプをしながら喜びを分かち合う。興奮してついハグリッドにも抱きついてしまった。
掴んだクディッチを高く掲げるハリーの周りには、それを称えるチームの姿。そして、グリフィンドールの掛け声が競技場に響き渡った。
クディッチの試合終了後、制服に着替え、ハグリッドも交えて、ハリーの箒について話す。ハグリッドはスネイプ先生が箒に呪文を掛けたことを、1ミリも信じていない。スネイプ先生がフラッフィーというハグリッドの犬に近づいたというハリーの仮説から、段々と話が逸れていく。何度も口を滑らせたハグリッドにより、ニコラス・フラメルという名前を知った。