第4章 Not surprised
完全復活、という訳では無いがほぼそれに近い。左手もあまり激しく動かさなければ痛みはない。さすが魔法学校の薬だ。治りが早い。これでやっと授業に戻れる。と言っても今日はもうないので、明日から通常通りだ。
医務室にいる時、マクゴナガル先生がチェイサーにならないか、と勧誘してきた。クディッチという魔法界のスポーツらしい。フーチ先生から聞いたのか、初めて箒に乗ったとは思えない動きだと褒めてくれた。でも、あの時はただ必死だっただけなので、これからもそうだとは限らない。箒も楽しいが、それより他のこともたくさん勉強したいから、とそのお誘いは断った。
女子寮に戻る。夕食は食べたのであとは寝るだけ。またベッドだ。致し方ない。パジャマに着替えようとした時、扉の向こうから大きい声が聞こえてきた。
「…──もっと悪くすれば退学よ」
『ハーマイオニーただいま。どうしたの?』
「あら…思わぬ出来事があったのよ」
『大丈夫?』
「大丈夫じゃないわ…実はね、禁じられた部屋に行ってしまったの」
ハリーがシーカーに選ばれたこと。寮に帰る時に階段に導かれ、禁じられた部屋に入ってしまったこと。そこで見たもの…ハーマイオニーは小声で教えてくれた。
たくさん積まれた本の上に立つ先生。まるで小さなサンタクロースのような先生の容姿に、失礼ながら可愛いと思ってしまう。動きも声もおちゃめな感じなので尚更だ。
浮遊術。今回は羽根を浮かべるらしい。隣に座るハリーと一緒に、杖を動かして呪文を唱えるが、杖を振った時の風に少し揺れるだけで、羽根は宙を浮きそうにもない。
『難しい…』
「浮かばないね」
2人で笑いながら練習していると、左の方でひとつの羽根が宙へと浮かんだ。成功したのはハーマイオニーだ。素直にすごいと感心してしまう。ロンは面白くなさそうに教科書の上に顎を置いている。
左どなりに座るシェーマスが負けじと杖を振る。そして大爆発が起こり、思わず右に体が動く。
『わあっ!』
「っ!……んんっ」
優しく体を受け止めてくれたハリー。ごめん、と言い体を戻そうとすると、肩を支えてくれたハリーの両手がゆっくりと押してくれた。左はまだ焦げ臭く、シェーマスの顔は炭で真っ黒だった。