第2章 Two scars
『うぅ、足がフラフラする』
「大丈夫かい?」
『ありがとう、ハリー』
あの後、無事にお金を手に入れた私たちは、本格的に買い物をしようと歩いている。手に入れたと言うと盗んだように聞こえるが、私たちの両親が財産を残してくれていたらしく、ハリーも私も同じように金庫の中は金色で溢れかえっていた。
銀行の金庫はトロッコで移動するらしく、気軽に乗ったはいいが、ジェットコースターも顔負けのその動きに三半規管がやられてしまった。覚束無い足取りでなんとか歩くが、ハリーが手を取って支えてくれてやっとだ。
ハグリッドが銀行で受け取った謎の包みは「秘密だぞ」と言われたので、特にハリーも私も詮索しないでいる。
順調に買い物が進んでいき、残るは杖だ。杖を買うとなると本当に魔法を使うんだ、と実感が湧く。杖ならオリバンダー、と勧められたお店へと向かう。勧めた当の本人は用があるらしく、一旦別れ、ハリーと2人でお店のベルを鳴らした。
店内には人気がない。お客さんも、店員さんも。荷物を棚に置き、遠慮がちにハリーが「こんにちは」と声をかけると、移動式のハシゴに乗った老人が奥から現れた。
「いつ会えるか楽しみにしていましたよ。さん、ポッターさん」
私たちの両親がここで杖を買ったのが、まるで昨日のようだと話すオリバンダーさん。棚から1つの長細い箱を選び、中の杖をハリーに渡す。握ったままのハリーに「振ってみなさい」と言う。言われた通りハリーが杖を振ると、棚が飛び出し書類が散乱した。どうやら、ハリーに合う杖を探しているらしい。次の杖を振ると花瓶が割れた。この被害も魔法で元通りになるのだろうか。
次に持ってきた杖を握ると、ハリーの周りに暖かい風が吹いた。この杖がハリーを選んだのだと、ひと目でわかる。その様子を見て不思議がるオリバンダーさん。
この杖には不死鳥の尾羽が使われており、同じよう不死鳥の尾羽で作られた兄弟杖がある。その持ち主が、この傷を付けたのだ、とオリバンダーさんが指さす。ハリーを見ると、額には稲妻の傷があった。
『ハリー、その傷…』
ハリーは前髪を下ろしているから、その傷に気が付かなかったのだろうか。なんて応えたらいいのか分からない、という表情をうかべるハリー。私はTシャツをぐいっと提げて、ハリーに鎖骨を見せた。