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Again【ツイステ】

第1章 蘇れ




『とりあえず、昼食代を稼ごう』
「ちぇっ…掃除なんてやってられねぇんだゾ」


ぶつくさとよく喋るグリムと並んで歩き、クロウリーさんが言っていたメインストリートらしき場所へたどり着いた。
今日は全学生が午後から授業なのか、10時を回っているはずなのに、やたらとすれ違う学生数が多い気がする。


「おい、見ろよアレ」
「うわ、ヤバー」
「アレが噂の?ウソ、超ヤバいんだけど」


(……ひそひそ声が……)


丸聞こえなんだよ、ガキども。
私は心の中でそう呟き、邪心をどうにか収めることに成功した。
人が往来するメインストリートを、なんとか校門まで歩き切るという苦行を達成し、深呼吸をする。


『まぁまぁ…「掃除」は「綺麗にすればOK」っていう最終目的がわかりやすくて、素晴らしい業務だよ』
「励みたくなんかねぇ!オレ様も魔法の授業で、バーン!ドドドーン!って、カッケー魔法打ちまくりたいんだゾ〜」
『へぇ。魔法って、打ってどうするの?』
「は?どうするって、どうもしないんだゾ」
『打って、何がしたいの。射的?決闘?』
「決闘!!それ良いな、オレ様カッケー魔法で決闘するんだゾ〜!オマエ、オレ様と決闘しろ!」
『私は魔法、使えないから』


一般ピーポーだからね、と私はグリムとの会話を終わらせ、校門横の人目につかない位置に設置されていた用具箱の中から、古箒を取り出した。
振り返った私の視界の端に、なんだか見覚えのある赤毛の男子生徒が映り込んできた。
ジッとこちらを眺めて様子を伺っているらしいその少年の視線に気づかないフリをして、私は、のんびりと石像を見上げているグリムの方へと近寄っていった。


『はい、箒』
「昨日はよく見てなかったけど、この石像は誰だ?7つあるけど、なんかみんなコワイ顔」
『うん?』


グリムが右の前脚を手のように使い、石像を指差した。
言われて初めて、私も石像のモデル人物達の顔が、やけに鋭い目つきで、冷酷な笑みを浮かべていることに気がついた。


(…あれ?この人達…どこかで、見たことがあるような)


「このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ」


私たちに一番近い女性の像を指差して、グリムがそう言った。
おばちゃんって…と私がため息をついた時。
その会話を聞いていた誰かが、声をかけてきた。



「ハートの女王を知らねーの?」


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