第1章 蘇れ
「あ〜な〜た〜た〜ち〜は〜ッ一体なにをしているんですか!!」
クロウリーさんが激怒するのも無理はない。
荘厳なシャンデリアは、グリムとエースの逃亡劇の末、粉々になってしまった。
「石像に傷をつけただけでは飽き足らず、シャンデリアまで破壊するなんて!もう許せません。全員、即刻退学です!」
「「「えぇ〜〜ッ!?」」」
そんな!と絶句するデュースを横目で眺めて、私は内心、(完全にこの子、巻き添いだよなぁ)と、他人事の気持ちで話を聞いていた。
「貴方がたも!!無一文でももう知りません、即刻出てお行きなさい!!」
『えっ』
私は自分の顔から、サーっと血の気が引いていくのを感じていた。
急にアワアワとし始めた私を横目で見て、エースが「この薄情者!」と非難する。
「許していただけるなら弁償でもなんでもします!」
「このシャンデリアはただのシャンデリアではありません。歴史的価値を考えれば、10億マドル下らない品物です」
「で、でもさ。先生の魔法でちゃちゃっと直せちゃったりとか…」
「魔法は万能ではありません。しかも、魔法道具の心臓とも呼べる魔法石が割れてしまった」
魔法石に二つと同じものはない。
もう二度と、このシャンデリアに光が灯ることはないでしょう。
(…いや、そんなことはない)
壊れたシャンデリアは修復不可だと語るクロウリーさんの言葉を聞き、私は反射的に言葉を返す。
『道具で代わりが効かないものなんて、あるわけない。この世で代わりが効かないものは、一つしかないんですから』
「…ふむ。貴方、そんな顔もできるんじゃありませんか。魂が抜けた抜け殻かと思っていましたが、そうでもなさそうです」
『抜け殻?』
ひどい言われようだ、と半ば呆れ顔で笑う私を眺めて、エースとデュースが目を丸くした。
その視線に気づき、二人の方へ視線を向けた時。
クロウリーさんは、何かを思い出した。
「…あ。そうだ、1つだけ。シャンデリアを直す方法があるかもしれません」
冷静になってきた大人が、ようやく、間違いをおかした子ども達に助け舟を出した。
私も二人と一緒に、その話を聞き。
「はい!ありがとうございます!」
「はぁーぁ。しゃーねぇ」
『行こう、二人とも』
三人と一匹。
新たな魔法石を調達しに、ドワーフ鉱山へ向かうこととなった。