第1章 蘇れ
(…座る席ミスった…男子高校生達の視線が痛い)
特に何も考えず、食堂の中央にある席を選んだ自分が悪い。
わかってはいても、実年齢にそぐわない格好をしているだけで、他人にジロジロと不快なほど見られ続けて良い理由などない。
『グリムそれ食べたら行こう』
「んな?オマエのそれ、残すのか?ならオレ様が食ってやるんだゾ!」
『…コラ、ダイブしない』
私の皿に向かって飛び込んでこようとした小動物の首根っこを捕まえて、ストップをかけた。
グリムが暴れるのをやめて大人しくなったタイミングで、ゆっくりと手を離す。
『かっこいい魔法使いは、テーブルマナーなんて楽勝に知っていなきゃいけない。その方がモテるし、何より。誰から見ても凛々しく、カッコいい。大多数のヒトがそう思うようにできてる』
「テーブルマナー…?なんだそれ」
『マナーその1。まずは皿に飛び込まないこと。そして食べ始める時には挨拶。「いただきます」。食べ終わったら、「ご馳走様でした」。この魔法の言葉を言うと、毎日の食事がとてもとても美味しくなるんだよ。ちなみに』
私はグリムの耳元でささやき、嘯いた。
『このマナーがもし、今ここで実践出来て、今後もずーっと自然にできたら、君には大魔法士になる素質がある。』
グリムは爛々と目を輝かせ、「いただきます!」と発声した。
そしてそのまま、姿勢よく皿にダイブしていったモンスターを見て、私は黙って頭を抱える。
「学業の傍らモンスターの躾け担当って、なんか入学早々大変ッスねぇ」
『…いえ…まだ入学できていないので』
「え?そうなんスか?あ、ちなみにこの席、そろそろ空くッスよね。次オレら使うんで、散らかした後はちゃーんと綺麗にしてから、どいてほしいッス」
私の隣に腰掛けてきた垂れ目の男子生徒は、人当たり良さそうな笑みを浮かべ、暗に「皿が空になったら、席を譲ってね」という意思表示を、真正面からしにきたようだ。
新入生だと考えて声をかけてきたような発言だったことを踏まえると。
この子はきっと、優しい顔をしてコワイタイプの上級生。