第1章 蘇れ
「カオル!オレ様そのチキンが食べたいんだゾ!あとその魚のムニエルも、チョリソーも欲しいんだゾ!」
『ビュッフェ形式か…ここお坊ちゃん校なのかな』
石像黒焦げ事件のあと、私とグリムは掃除に戻り、エースは初回の授業があるらしく、クロウリーさんに教室へ連れて行かれた。
午前中は石像の掃除に時間を奪われ、メインのストリート掃除は一歩も進んでいない。
進捗はダメですが、腹が減っては掃除ができない。
私は仕方なく作業を中断し、本当に仕方なく、12時丁度きっかりに大食堂へやってきた。
大食堂には、出来合いの料理が並んだビュッフェコーナーの他、店員さんがカウンター内にスタンバイしているベーカリーの出店が配置されている。
(…他人のお金でご飯が食べられるのって、なんか居心地悪い)
出資主の真剣な説教を聞き流しておきながら、私は多少の罪悪感を感じつつ、ゴーストがスタンバイしているビュッフェコーナーの精算カウンターを通り過ぎた。
広い広い食堂の適当な位置に腰かけると、軽快にテーブルの上を走ってついてきていたグリムが、そのまま腰を下ろした。
「カオル!早く!オレ様腹ペコなんだゾ!」
『…グリム。足の裏拭いてから机の上を走ってたのかな?これからみんなここでご飯を食べるんだよ。粗相は良くない』
「オレ様、足なんて拭いたことないんだゾ!そんなこといいから、早く昼ごはんよこすんだゾ!」
『………。』
ゴト、とグリム用に取り分けていた料理が乗ったトレーをテーブルに置くと、予想通り、グリムは顔面から食器にダイブした。
「んまぁあ!うめー!」
『…これは、監督するっていうより、躾けるって感じになりそうだな…』
私がグリムと話をしながら、食事にようやく手をつけたタイミングで、ゴーーーン、という身体が震えるほど大きな鐘の音が大食堂に響き渡った。
びっくりしてしまい、鐘が鳴り終わるまで硬直していた私とグリムの耳に、ガヤガヤとした喧騒が聞こえてくる。
何がやってくるのかと身構えていると。
大食堂の扉が開け放たれ、男子生徒達が食堂へ流れ込んできた。
『…あぁ、12時を少し過ぎた頃に午前の授業が終わるんだ』
「…授業…オレ様も……フン!いいんだゾ!オレ様にはこの、「季節のチキンのソテー 〜ブロッコリーを添えて〜」があるんだゾ!」
『チキンに季節はないと思う』