第4章 DAY 3
「いいんだよ、獄さん。汚い女だって罵って。」
頬をなぞる一筋の雫。
「だってわたし汚い。前だって、今日だって、好きでもない人にそういうことされて」
「なずな。」
「男の人は女の子の初めてがいいんでしょ。わたしは好きな人の初めてにもなれない」
「なずな。」
「もう嫌。自分が嫌い。こんな性格もこんな体も全部全部大っ嫌」
「なずなっ!」
抱きしめられる体。
わたしを離そうとしない優しい腕の力も。
体から伝わる暖かい体温も。
低くて甘い声も。
全部嫌いで逃げたくて、獄さんの腕の中で暴れるけれどやっぱり相手は男の人。
力では敵わない。
それでも暴れれば獄さんはぎゅうとわたしの体を抱きしめ小さな声で呟いた。
「お前が好きだよ、なずな。」
時が止まる。息が止まる。
体の力を抜いて獄さんの胸に寄りかかれば腕の力が緩む。
「ずるいよ。」
獄さんはずるい。
ずっと欲しかった言葉を今言うの?
ゆっくり獄さんの胸を押し体を離すとわたしは着ているスウェットを脱ぐ。
「じゃあ、えっちしてよ。」
傷と痣だらけの体と顔。
我ながら酷い有様で涙をこぼしながら笑う。
「そんな慰めの好きなんて要らない。」