第1章 序章
出会い。
2年前、俺の前に初めて現れた女児。
体が成長するからと親に買われた本人よりひと回りでかい制服。それに着られた死んだ目のガキ。クセだろう。無意識に制服の上からガリガリと左手に爪を立てたそいつ。
まるで初めてうちに来た十四のようで思わず右手を掴んでしまった。
びくんっ、と跳ねる体。
鈍く響く椅子の倒れた音。
か細い否定の声。
掴んだでは細く頼りなくて思わず手を離せば、ガキは目線を下に下げごめんなさいと呟く。
「親にも言いたくない相談、か。」
座れ、と促すと相手は言葉に従い椅子を戻し座る。
「で、なんだ。」
そう問えば、ガキはポケットからスマートフォンを取り出し操作をした。
流れ出す音声。
「は…なんだこれ。」
ガキのスマートフォン・ケースの可愛さからかけ離れた音声。
ねっとりとしたおっさんの荒い息。
啜り泣く声。
チャイムの音。
粘着質なぐちゃぐちゃとした音と肌がぶつかり合う音。
思わず頭を抱え目の前のガキを見ればガラス玉のような瞳から一筋涙が溢れた。
「助けて」
小さく溢れた声に、俺は強く拳を握った。
「助けてやる。俺は負けたことがねえんだ。
おめぇを地獄から抜け出させてやる。」
嫌なBGMを聴きながら俺は本音を伝えれば相手は小さく笑った。