第3章 DAY 2
どのくらい抱きしめられていたのだろう。
獄さんのポケットのスマホが震える。
悪い、そう言って獄さんは私から離れた。
離れて嬉しいような悲しい気持ちがないまぜになりよくわからない。
「なずな。」
獄さんが私を呼ぶ。そちらを向けば獄さんは私の腕を引きお寺の門を出る。
「獄さん、お参り…」
「それはまた改めて。移動するぞ。」
腕を引かれて辿り着いたのは獄さんの車。
来た時と同じ助手席に乗り込めば獄さんはエンジンをかけ車内を温める。
「さっき連絡が来てただろう。空却からでな…」
そう話し始めた獄さん。
簡単に言えば先日獄さん達三人が襲撃に遭いこてんぱんにした違法マイクを持つ奴らに似た人を空却くんが見かけたようで注意しろ、とのことだったみたい。
それで獄さんは私を連れて境内より安全な獄さんの車へと移動したらしい。
私の安全を守るためにも戻ってくるなとお達しがあったようでこのまま帰宅となったのだが…
「流石に年も明けねえもんな…」
時間はまだ十二月三十一日。
あともう少しだけれど家に着いてもまだ時間は余るようで…
「仕方がねえか…よしなずな、付き合え。」
「うんっ!」
その言葉が嬉しくてシートベルトを締め直せば、走り出す車。
ラジオからは聞こえた歌番組は最後の盛り上がりを私たちに知らせていた。