第3章 DAY 2
「行っちゃった。」
「大方裏方の手伝いでもさせようって魂胆だろう。十四も修行だって言って何度もここには来ているしな。」
獄さんの言葉の通り、十四くんは空却くんの所へ行くと中へと入っていく。
これは人が捌けるまでは拘束コースだな、なんて思っていれば獄さんが私に声をかける。
「空却からメッセージ来てる。」
へ、と首を傾げながらスマホを見ればグループメッセージに新着メッセージ。
「十四借りる。多分始発まで返せねえから先帰ってろ。」
あらら。十四くん、お疲れ様。
了解のスタンプをポンと押しスマホをポケットに仕舞うと獄さんを見る。
同じタイミングでスマホを仕舞った獄さんと目が合い、ふいと逸らす。
この後どうするんだろう、なんて考えていればぐんと引かれる腕。
バランスの崩れた体は後ろへと倒れ、何かにそのまま包まれた。
「なずな、危ねぇ。人多いのにぼうっとすんな。」
背中から降ってくる声。
どうやら私は人にぶつかられそうになり、獄さんに助けてもらったらしい。
でもこんなラッキーハプニングあっても良いのだろうか。
引かれた体は獄さんの腕の中。
ついでに周りにたくさんの人がいるからか、迷子防止に柔らかく抱きしめられている状態。
わたわたと腕から抜け出そうとするけれどただ逃げようとしてるだけに見えるのか余計にぎゅっと抱きしめられる。
「獄さん……離して…」
言葉に出して抵抗してみたけれど獄さんは離さない。むしろわたしをぎゅうぎゅうに抱き締める。
「さすが餓鬼、あったけえな。」
「湯たんぽじゃない、です。」
「子供体温は違うな。」
違います、そう言おうとしてやめた。
だって獄さんに抱きしめられているからだと伝えてもきっと獄さんは信じてくれないから。
外が暗くてよかった。
後ろから抱きしめられててよかった。
私の赤面した顔が獄さんには見えないから。