第3章 DAY 2
「おう、来たな。」
空却くんのお家に向かえば、いつもより装いを正した空却くんが忙しそうに動いていた。
忙しいのに綺麗な佇まいの空却くんはやっぱり綺麗で普段の空却くんよりも美人さんだなと惚れ惚れする。
本人にそれを伝えれば、空却くんはくしゃりと笑いながら「ばぁーか」と頭を乱す。
「拙僧が美人なのはいつものことだろう?」
そう言ってヒャハハと笑う空却くんは少し話をしただけで再び仕事に戻って言った。
「大変そうっすね、空却さん。」
「参拝客がごまんと来る今日が稼ぎ時だからな。」
獄さんが言った言葉を表すように、お寺には少しずつ人が増えていた。
メディアにも取り糺されるようになった三人。
ヒプノシスマイクの使い手である三人はやっぱり有名だ。
だからこそ今年の参拝客は増えるって空却くんは予想していたし、その分十四くんは身バレ対策としてのマスクを常に持ち歩くようになった。
獄さんは最近はマフラーで顔を隠しているけれど、今日はいつもセットしている前髪を下ろし、メガネをかけているからいつもより柔らかな雰囲気でいつもとは雰囲気が違う。
十二時が近づくにつれどんどん人が増えてくる。
空却くんが予想していた以上だったらしく、ふと空却くんを見ればあの空却くんが少しだけ眉を釣り上げて走り回ってる。
「空却さん、大丈夫ですかね…」
なんて十四くんが心配の声を上げていると、金色の目がこちらを向いた。
「十四ィィィイ!」
「はいっすぅぅう!!!!」
日頃の修行の成果…と言ってもいいのだろうか…空却くんの声にいち早く反応する十四くん。
十四くんが空却くんの方を向けば手招きをしている。
「ちょっと行ってきます!」
そう言って駆け出した十四くん。
行ってらっしゃいとその背中に声をかければ彼は軽く手を振りながら空却くんの方へと行ってしまった。