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好きのベクトル【ヒプマイ】

第2章 DAY 1



聞こえた声に後ろを振り向けばいつものライダースよりはラフな格好の獄さん。

「誰が集まるのが早いオッサンだ。お前らが遅いんだよたあけ。」

時計を見ればわたしたちが来てから十五分。まあ獄さんにとってはいつも通りだ。

「獄さん!おはようございます!」

わんこな十四くんが獄さんに駆け寄りわんわん甘える。
それを見ながら空却くんと二人獄さんに近づくとわたしに気づいた獄さんがふいと視線を逸らしわざとらしく空却くんに話しかけた。

「お前か、なずな連れてきたの。」
「おう、別にいいだろ知らねえ仲じゃねえし。」

ちっ、と舌打ちをしながら獄さんはポケットのタバコに手を伸ばすが、ここら辺一帯が禁煙だということを思い出したのか、ポケットに手を入れたまま獄さんは目の前の建物に足を向けた。

「獄ァ、どこ行くんだよ。」
「俺の集合時間にはまだ時間があるんでね。地下で煙草吸ってくる。」
「タバコ吸える店にすりゃあいいだろ。」
「未成年3人の前で吸えるか。いつものファミレスに先行ってろ。」

じゃあな、と獄さんはわたしたちに背中を向けて歩いていってしまう。
やっぱりだめだったかな…とため息を吐けば私以外の二人がにまりと笑う。

「獄、あれ照れてんぜ?」
「ですよね、空却さん!」

照れる…?照れるとは…
あの獄さんが照れるのを想像できない。
にまにまする二人の顔を困ったように見ていれば、二人は私の肩を叩く。

「よし、先に飯食ってようぜ。俺肉。」
「自分、メニュー見ながら決めるっす!」

すたすたと先に進む二人を見ながら、わたしは首を傾げた。
昨日のコーヒーの件といいさっきの獄さんの態度に関しての二人の表情といい、二人は何を言っているのかが分からない。
でもわたしが問うてもあの二人は教えてくれないんだろうなぁ。
何度目かのため息を吐きながらわたしは先に進む二人の後を追った。

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