第4章 碧棺左馬刻(part1)
今日は公休の日で、朝からご主人様に呼び出されていた。
地下に続く階段を降り、茶色の扉を開けると、そこにはご主人様ではない人が1人、カウンターに座って煙草を燻らせていた。銀色の髪にアロハシャツを来た男だ。
――碧棺左馬刻。
入間先輩が「悪徳警官」という噂が立つようになったのは、彼と懇意になったからといっても過言ではない。
私はなぜ彼がここにいるのか戸惑う気持ちを隠し、避けるようにベッドへと向かう。
「おい」
鋭く響く彼の声に、私は足を止める。ご主人様の荒々しい言葉使いとはまた違う。もっと根本的なところから攻撃性をはらんだ声色だ。
「……なんでしょうか」
彼の方は向かず、その場で呼びかけに答える。
「お前、銃兎のペットなんだろ」
ガタンと椅子を引く音がして、彼の気配が私まで近づいてくる。私は質問に答えたくなくて、首を縦にも横にも振らなかった。私は先輩に弱みを握られているからペットになっているだけで、ヤクザの碧棺左馬刻にまで答える義理はない。