第3章 <2>首輪のついたペット
次に目が覚めると、私はあのワインレッドのベッドの上に横たわっていて、体の上には布団がかけられていた。
ご主人様の姿を探すと、見慣れたスーツ姿で出かける準備をしていた。チャコールグレーの髪は七三分けにセットされ、この布団と同じ色の手袋を嵌めている。私がかつて慕っていた先輩が、そこにいた。
「目が覚めたようだな」
「……はい」
「お前は今日、公休の日だろ。ゆっくり休むと良い」
そう言って私の唇に触れるだけのキスをした。
「帰ってきたら、またたっぷり可愛がってやるから」
口端をつり上げると、煙草に火を付け、ふーっと燻らせながら地下室から去って行く。
「ああ……疲れた、な」
もう起き上がれない位、私の体は疲れていた。ふかふかで柔らかいベッドに顔を埋めるようにして、私は深い眠りに落ちた。