第3章 <2>首輪のついたペット
時刻は17:30。私が事件現場から帰ってくると、デスクの上に、白紙のカードが1枚置いてあった。
裏返すと、メッセージが書いてある。
<19:00 みなとみらい○丁目 XXビル 地下1階。誰にも言わず一人で来い。でなければ、写真をばらまく>
動揺して、カードを持つ手が震える。差出人は書いていないけれど、間違いなく入間先輩からのメッセージだと分かった。
あの夜、私は入間先輩に犯され、最後に写真を撮られて弱みを握られた。周りに知られたくなければ、俺の言うことを聞け、と囁かれて。
でも数日は何もなく、先輩とも署内ですれ違うこともなかったから、私はつかの間の安息を得ることが出来ていた。でも、とうとう、その日はやってきてしまった。
一体、何をされるのか分からない恐怖で息が苦しくなる。行く場所にいるのが、先輩一人だけとは限らない。それでも弱みを握られた私には、行かないという選択肢はない。
これから報告書を書いて事務処理をしなければならないのに、ペンを持つ手が震えて、書かなければならないことが書けない。同僚に肩を叩かれただけでビクリとして、心配そうに見つめられた。
私は、1時間半後が、怖かった。