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恋と麻薬【名探偵コナン】

第11章 出会い



「そう言えば名前を聞いてませんでしたね。僕は安室透です」

彼女にバーボンという名前は知らせたくなかった。
彼女が見たのは自分だけ、黒の組織とは関係がない、と。


「七瀬カホです」

彼女の名前はカホと言った。

「それではカホさん。今から貴方は僕と一緒に住んでもらいます。家が違っては監視しようとも限度がありますので。それでも構いませんか?」

「はい」

断られたらまた理由をさらに付けて何がなんでも一緒に暮らすよう言うように考えていた。
恐らくそうなるだろう、と思っていた。
けれど彼女は素直にはい、と言った。
その時の表情は消して怖がっているようには見えなかった。
見間違えかもしれない、そんなこと有り得るはずがないのだが、一瞬、彼女の表情が明るくなったように見えた。


彼女の家へと案内してもらい今晩自分の家に泊まれるよう最小限の持ち物を取りに行ってもらった。

残りは引越し業者に頼んで部屋の退去の手続きはこっちでやると言った。

彼女は数分で車に戻ってきた。
そのまま自分の家へと車を走らせた。



「こんな状況になってからで順番が逆だったのですが、カホさんは今お付き合いしている方はいますか?」
「…いえ、いません」
「そうですか」

彼女の美貌なら恋人がいてもおかしくないと思ったがどうやら今はいないらしい。
いた場合はどう手を打とうかと策を考えていたがその必要はなかった。



「狭いですが、どうぞ」
「お邪魔します」


彼女は自分の部屋、安室透名義で借りている部屋だが、そこに足を踏み入れた。
自分で一緒に住もうとは言ったものの、何の迷いもなく男と2人の部屋に踏み入れると言うのは少し不安になった。

警戒心はないのか

俺はさっきからそれが気がかりだった。

彼女は腕を引っ張られた時も家に住んで欲しいと言った時もそのまま素直に従った。
多少は驚いたり、怯えたりしてもいいと思う。

彼女の心が見えない。
ただ自分の言うことに文句も言わず顔色も変えずに従う。

まるで感情が消えてしまったように。


今だってそうだ。
彼女は部屋に踏み入れておろおろする訳でもなく、ただ次に自分が指示する言葉を静かに待っている。


俺は彼女の心を閉ざしてしまったのではないか。
ふとそんな後悔が過ぎった。

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