• テキストサイズ

恋と麻薬【名探偵コナン】

第10章 私じゃない


「ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願い致します。」

カホは相手先との交渉が成功し、頭を下げてそこを出た。


御社の商品を多く取り入れてくれると言ってたな…


カホは交渉の手応えを感じ、早く本社に戻ろうと先を急いだ。





ふと進めていた足が止まる。
カホのいる通り沿いにあるホテルから男女が腕を組みながら出てきた。
男の方は傘をさして、どうぞ、と言って女の方を先に中へと入れる。
そして、2人はまた腕を絡ませた。


彼らは周りから見ても纏っている雰囲気が違った。
まるで映画のワンシーンのような。
美男美女で、男の方は女の方を大事そうにエスコートして。




カホは目の前の光景に目を離せなかった。


ホテルから出てきたということは、ただの友人という訳ではなさそうだ。
男の女への扱いがそれを物語っている。
ポアロでの紳士さとはまた違った、皆に向ける作られた笑顔なんかじゃない。




彼の隣に並ぶのはああいう女性なんだろうな…



彼と腕を組んで微笑む女性はなんだかオーラーを纏っていて、女の私でも圧倒されるぐらい美しくて
彼の隣にいるにはそれは似合いすぎるぐらい


カホは安室の隣にいるベルモットの姿により胸が苦しくなった。
自分にはどうしてもなれないような、そんな存在。






これは恋人ごっこ
いや、恋人ごっこにも過ぎない
彼は初めに言った、監視するためだって

私は彼に監視されるために近くにいただけ

彼の好きです、なんて何の意味も含まれていない
私を思い通りにさせる為に吐かれた嘘の囁き

全ては彼の作られた優しさに勝手に漬け込んで好意を寄せた私が愚かだった


彼が恋人を作ろうがそれは彼の勝手で普通のこと

それに目を背けていたのは私の方




だから私が傷つく資格なんてこれっぽっちも無い




カホは目尻が段々と熱くなって何かが込み上げてくるのをグッと耐えた。
ここで泣いてはだめ、泣くな…泣くな…泣くな







安室はさっきから自分たちの前方で傘をさして立ち止まっている人物が気にかかっていた。

なぜあんな所で立ち尽くしているんだ。


安室は段々とその人物へと近づく。

チラッと横目でその人物を確認して、安室は目を見開いた。





/ 346ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp