第8章 お招き
「時たま少年探偵団の子達が遊びに来てくれるんですよ」
「ああ、だからあんなに懐いてたんですね」
「見ていて面白いですよね、ほんとに」
面白いというのは彼らの行動だろうか。
まあ少年探偵団というだけで他の子とは違う気がするが。
沖矢さんは子供が好きなのか。
「私コナン君とはポアロで結構会うんですよね」
「彼、その上に住んでますしね」
「ええ。
コナン君ってなんだか大人びてますよね」
「私もそう思います。ボウヤには日々驚かされることがありますね」
「やっぱり毛利さんと一緒に暮らしているからなんですかね」
「それもあるかもしれませんね。まあ、それ以上に彼自身がどこか小学生には見えないんですがね」
コナン君が大人っぽいと思っていたのはどうやら私だけではないらしい。
周りの人たちがあまりにも普通に接しているから皆特にそうは思わないのかと思っていたが。
「そういえば、沖矢さんってこの前もハイネック着てましたよね。お好きなんですか?」
ふと沖矢さんを見て気になったことを尋ねる。
今日は気温が高めである。
にも関わらず沖矢さんはハイネックだった。
「私は寒がりなんですよ」
「なるほど、私は逆に暑がりですね」
「あ、冷房入れますか?今日は気温が高いですし」
確かに少し室内も暑くなってきたし、入れてもらおう。
「いいですか?」
「ええ」
沖矢さんは席を立つ。
私は鞄から髪ゴムを取り出し簡単に束ねる。
さっきよりも首元がすっきりして涼しい。
「少ししたら涼しくなると思いますよ」
沖矢さんは再び椅子に腰掛ける。
「ありがとうございます」
「カホさんって…」
沖矢さんに名前を呼ばれ今度は何の話をするのかと考える。
が、その後の言葉は来なかった。
「沖矢さん??」
どうしたんだろうかと沖矢さんの方を向く。
沖矢さんは何やら私の方を凝視している。
え?なに??
そうかと思えば沖矢さんは私の方に近づいてきた。
え?
思わず後ろに下がるが私が今いるのはソファの上。
下がる距離もなかった。
気づけば沖矢さんは目の前にいて、
「お、沖矢さん!」
彼の手が伸びてきて思わず目をぎゅっと瞑る。
すると、何かが首に触れた。
「もう蚊が飛んでいるんですかね」
沖矢さんが指で首の一点を押した。