第7章 願望
しばらくしてなんだか周りが静かになっていることに気づいた。
隣にいる園子ちゃんを見ると、園子ちゃんの目は涙目になっていた。
「え、?ちょっと園子ちゃんどうしたの??」
何かいけないことをしてしまったのか、それとも園子ちゃんに何か辛いことがあったのか、私は目の前の状況に慌てた。
「だって、カホさんかわいそおぉ…!」
大きな声でそう言うと園子ちゃんは私にガバッと抱きついてきた。
「え??」
私はもっとパニックになった。
蘭ちゃんに助けを求めようとするも蘭ちゃんもなんだか涙目になっている。
どうした
「分からないけど辛い別れだったんですよね?カホさんこんないい人なのに、許せないわよぉ」
どうやら涙目の原因は私の話だったらしい
いい子すぎるよ、君たち
「園子ちゃんたちがそんなになることないの、!もう、ほんとに優しい子たちなんだから!」
私はポンポンと園子ちゃんの背中を叩いた。
「カホさんはまだその人のこと好きなんですか?」
園子ちゃんが席に座り直して私の目をじっと見つめて聞いた。
少し目が赤くなってる。
「ううん、もう好きじゃないよ」
「じゃあ、もしその人がもう一度目の前に現れたら?」
「そんなことあるはずないわ」
「もし!もしもの話です!」
もう一度"彼"が現れたら。
そんなこと考えたこと無かった。
「うーん、ちゃんとはわかんないけど別れた時のことちゃんと話して欲しいかな…」
もしかしたら今はもう結婚して家庭を持っているかもしれない。
そんな人に過去の恋人との別れの話なんて問いただすのは迷惑かもしれない。
でも、知りたい。
ちゃんと自分の中で終わりにしたい。
それで、ちゃんと前に進みたい。
園子ちゃんは目の前に置かれたミルクティーを一気に飲んで私の手をぎゅっと握った。
「カホさん!新しくいい人を探そう!その人よりもいい人!それでその人を見返してやるの!」
こんな私のためにこんな一生懸命になってくれる彼女が私はとても嬉しかった。
「そうだね、ありがとう」
私はそう言って彼女の手を握り返した。
"彼"よりも、安室さんよりも、いい人見つけなきゃ、ね。