第7章 願望
「え?」
いつかも言われたようなその言葉に私は思わず園子ちゃんの方を振り向く。
「安室さんってカホさんのこと好きなんですか?てか絶対そうですよね!」
「ちょ、ちょっと何言ってるの、園子ちゃん…!」
私は慌てて園子ちゃんを止める。
園子ちゃんは絶対そうなんだから!と安室さんの方を見る。
「うーん、確かに他の人と同じようには見れませんね」
「え、」
「ほらー!やっぱり!」
「でも、それは恋愛感情ではないと思いますよ」
「えー、そうだと思ったんだけどなー」
一瞬ドキッとした心は、すぐに元通りに戻る。
そんなわけない、それは分かりきっていたことだ。
「安室さんになんて私が合わないですよ、」
「そんなことないですよ!カホさんこんなに美人なのに!」
あはは、ありがとうと笑って園子ちゃんのお世辞を受け取る。
思ったよりも傷ついてないな
恋愛感情はない、と言われ、好きじゃないという言葉よりは遥かに気持ちが楽だった。
嫌われてはいない、
今はそう分かるだけでも良かった。
「カホさんって今までたくさんモテてそうですよね」
「もう、蘭ちゃんまで。ほんとにそこまでモテてないのに」
「そこまでってことは何人かはいたんですね!」
園子ちゃんがすかさずツッコミを入れる。
「やっぱ今までの彼氏さんはイケメンだったんですか?」
「えーと、そうね…かっこよかった、かな」
「きゃ〜」
園子ちゃんは詳しく!とすごい勢いで食いついてきて、蘭ちゃんも目をキラキラさせながら見てくる。
「僕も是非聞いてみたいですね。カホさんのお付き合いしていた方がどんな人だったのか」
今まで特に話に入ってこなかったのに、安室さんは洗い物の手を止めて私の方を見た。
安室さんがいる中でこの話はしにくいな…
私は少し躊躇うが安室さんは私の恋愛などただの興味にしか過ぎないのだと納得する。
少しでも私の情報があった方がいい、ということなのか
でもあまり多くは話さない方がいいだろう。
"彼"にまで危険が及ぶことは避けたい。
まあそこまで気にすることもないだろうが。
「その人は…」
私はあまり考えないようにしていた、かつての"彼"の話を始めた。