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恋と麻薬【名探偵コナン】

第1章 恋人


5秒ぐらいして唇がゆっくり離れた。

「…カホさん、凄く可愛いですよ」
「思ってもないのによく言えますね」
「思ってますよ、他の人の目には入れさせたくないぐらい」

「安室さんのこと口外すると思っているからですか?」

「…」

安室はカホの言葉に動きを止めた。が、直ぐに微笑んで

「あなたはそんなことしないでしょう?」
と彼女の目を見て言った。





やっぱり監視が目的か。
さっきのキスも恐らく彼の暇つぶしにしか過ぎない。
だからこんな心臓の鼓動を速める必要なんてない。
彼は私を好きじゃない、好きじゃない…好きじゃない…。

だから彼を好きになってはいけない。
彼の思い通りになってはいけない。



「ここで殺されるか、僕と付き合うか、どっちがいいですか?」


2年前のあの夜、返り血を浴びた彼に言われた。
その時は別に殺されても良かった。現にそう告げたし。

もう大切な人は作らない。あの時そう決めたのだ。
どうせ自分の元からいなくなるなら作らない方がいい。
恐らく彼も時間が来たら捨てるのだ。いや、もしかしたら殺されるかもしれないけど。

それでも彼になら殺されてもいい、そう思う。

ここまで来ると自分もどうかしている。
何もかも嫌になって、自分の命なんてどうでもいいと思った。心に穴が空いた気分だった。

そんな時だ、彼に出会ったのは。

出会いはいいものではなかった。けれど、彼から与えられる優しさが、言葉が…。
「好き」という言葉もキスもセックスも愛情なんてない。彼の遊びに過ぎない。性処理の女なのかもしれない。

"彼"とはもう会えない。

だから私は時たまあなたがくれる言葉や偽りの愛情をあの人と重ねてその優しさに漬け込むのだ。
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