第4章 友達
「ねえねえ、カホお姉さんって安室さんと付き合ってるの?」
「えっ…?」
カホは歩美からの質問に言葉が出なかった。ただの子供からの興味本位での質問だと分かっているのに。
同じくしてコナンもまた驚いていた。コナンが沖矢が来る前にカホに聞こうとしていたのは歩美と同じ質問だった。
コナンはちゃんとした確信はないが、ポアロでの安室のカホに対する態度、接客が多少他の人と違うように感じていた。ただ安室がカホを好いている可能性も0とは言えないのだが黒の組織の一員、バーボンが一般人に構うとも思えなかった。
1番気になったのはミステリートレインでの安室の態度だ。
カホを見つけた途端、驚くというよりは、あれは焦りに近かったと思う。そして、しまった、という表情。
ほんの一瞬だったが蘭たちを見つけたときには出さなかったそれ。
バーボンにとって彼女がその場にいる事が不利だとするならば彼女は安室にとって親しい存在なのではないかと思ったのだ。
彼女には幸せになってほしいのだ。
あの時の彼女の顔から表情が消えていく様子を目の前で見ていたから。
必死に叫んで、助けに行こうとして、目の前で自分の親を失った彼女の絶望の顔。
あれが俺の中から消えないのだ。
だからこの姿になって彼女とポアロであった時、安心した。
生きていた
不謹慎かもしれないがあんな事故の後だ、彼女は相当苦しんだと思う。
最悪の形にはなっていなかった。
むしろ明るかった。
蘭たちは彼女がどういった過去を持っているのか知らない。両親が事故で亡くなったというのは知っているが、その最期までは知らない。彼女も俺がそれを知っているとは思っていないだろう。
だから、無理して笑っていないか
辛そうな表情をしていないか
1人で傷ついていないか
つい気にかけてしまうのだ。彼女は心配性ね、と言うが、もうあんな表情は見たくなかった。
ポアロでの彼女は自然に笑っているように見える。
でもたまに、彼女の、
安室さんへの表情が切なそうだったりする。
俺にはどうしてそんな表情をするのか彼女を見ていても全然分からないんだ。