第4章 友達
「カホさんはこの後どっか行くんですか?」
アイスココアを飲んでいた私に蘭ちゃんが尋ねた。
「実はね、腕時計が壊れちゃって。
本当は両親から貰ったものだから変えたくないんだけど…
もうずっと使ってるし新しいの買おうかなって」
私は左手首に巻かれた腕時計を撫でる。
「あ、博士なら直してくれるんじゃない?」
ふと園子ちゃんが言う。
「そうね!今日コナン君が博士の家に遊びに行くって言ってたから、博士も家にいると思うし、カホさん行ってみたらいいと思います!」
「でも、良いのかなー。阿笠さんと私そこまで面識ないし…」
「大丈夫ですよ!博士そーいうのあんまり気にしないですから」
「じゃあ直して貰おうかな…」
てっきり買い換えなければいけないと思っていたので素直に嬉しかった。
蘭ちゃんがコナン君に今から私が阿笠さんの家に行くと連絡してくれた。
阿笠さんの家はあの工藤優作さんと有希子さんの豪邸の隣らしい。
「色々ありがとう…!」
2人にそうお礼を言って私はポアロを後にした。
──────
「ここ?」
大きな豪邸の隣にある面白い形をした家というのは、恐らくこの家のことだろう。
少しだけ緊張してインターホンを鳴らす。
─ピーンポーン─
「はい」
しばらくして応答があった。
この声は哀ちゃんだろう。
「哀ちゃん、七瀬です」
「ああ、カホさん。今開けるわ」
中から哀ちゃんが出てきて中へ案内してくれた。
なにやら扉の向こうからワイワイとした声が聞こえる。
「お邪魔します」
扉を開けると、あ!カホお姉さんだ!と歩美ちゃんが近寄ってきた。
「ごめんね、みんなが遊んでるとこ邪魔しちゃって」
「ううん!いいの!歩美、お姉さんに会えて嬉しい!」
そう言ってくれる歩美ちゃんが天使に見えた。
思わずぎゅーっと抱きしめる。
「いらっしゃいカホくん」
「あ、阿笠さんこんにちは、今日は本当にありがとうございます」
「いや、構わんよ。それじゃのぉ?腕時計は」
「そうです」
私は腕時計を外して阿笠さんに渡す。
「ふむふむ、大丈夫じゃよ、ちょっと預かるが構わんか?」
「はい、よろしくお願いします」
阿笠さんがリビングを出て私はその場に突っ立っていた。