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恋と麻薬【名探偵コナン】

第28章 困惑


「秀一さんって…名前で呼ぶほど親しいんですか」

そう聞いた安室の声は普段と違って
昨日の夜に聞いた、電話の声と似ていて

その声にカホはゾクッと背筋が震えた。

「もしかして、今もこっそり会ってたりするんですか」



僕の目を盗んで


と安室はカホの耳元で囁いた。

「ちがっ…」

カホは耳元で囁かれるのに弱い。
安室ならそれを十分に分かっている。

彼のペースに流されている、とカホは抵抗しようとも既に体の至る所は安室に固定されている。


「赤井はカホさんにとってどういう存在なんですか」

安室の顔には少し笑みが浮かんでいて、カホはそれが怖かった。

安室の手がカホの首元に触れる。
トクン、トクンと一定の脈が安室に伝わる。

「ただの知り合い?」

安室の青い瞳が真っ直ぐカホを捕らえて、カホはその瞳から逸らせなくなって

「それとも友達?」

安室の問いに勝手に心臓が騒ぎ出して

表情は必死に平静を保とうとして


「もしかして…恋人、だったり」



ドクンッ




安室の指先にカホの脈が一際波打ったのが伝わって

はは、と安室は思わず乾いた笑いが零れて




一番そうであって欲しくなかったのに



と俯きながら呟いた。


「今も、ですか」


表情の見えない安室からの言葉にカホは首を横に振った。


「そうですか…もし今もだったら殺してたかもしれません」


赤井を、と言って顔を上げた安室の表情は何を考えているのか読み取れなかった。

「嘘ですよ、そんな怖い顔しないで下さい」


安室はそう言うがカホにはさっきの言葉は嘘のように思えなくて

本当に殺してしまわないかと不安になって


「本当、ですか…」

必死に絞り出したその声は消え去ってしまいそうな程小さかった。

「本当ですよ。

殺したいほど憎んではいますがね」


どうして、

喉まで突っかかったその言葉をカホはグッと飲み込んだ。


「そうか…赤井か…」


安室は1人そう呟いた。



自分の愛しい女性の元恋人が自分の1番憎い相手だなんて

そんな、馬鹿な話があるか…。


安室は信じたくもない事実に目の前が真っ暗になりそうだった。


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