第4章 友達
─ピピピピ、ピピピピ─
アラームの音で目が覚めた。
昔の夢を見た。
幸せだった頃の…全て失ったときの…彼に会ったとき、の…
昨日のニュースを見たからかな
ぼーっとした頭で天井を見上げ、ここはリビングではないことに気づく。
また運んでもらってしまった
そろそろソファで寝る癖をやめたいものだ。
─ガチャ─
扉を開けるといい匂いが漂っている。キッチンの方からカチャカチャとした音が止んだ。
「おはようございます、カホさん」
「おはよう、ございます、安室さん」
彼は寝癖ついてますよ、とにこにこしながら言う。
私は髪を手で押さえて洗面所へ向かう。
右の方の髪がピンとはねていた。
リビングへ戻ると安室さんがコーヒーを入れていた。
「ありがとうございます」
「いえ、冷めてしまうので食べましょう」
2人でいただきますをして朝食を食べる。
「今日は安室さんポアロじゃないんですか?」
「今日は昼からなんです。その前に少し寄る所があるので朝食を食べ終わったら出ますが」
「私も午後から出勤なので鍵はかけておきますね」
「送っていきましょうか?」
「安室さん寄る所があるんでしょう?」
「ええ、でも家に戻ってくる時間はありますし」
「大丈夫ですよ、気持ちだけ受け取ります」
朝の何気ない会話。私はこの時間が意外と好きだったりする。あまり彼と揃って朝食をとることは少ないから。
「洗い物は私がします」
「大丈夫ですよ、休んでてもらってかまいません」
「なんとなく動きたい気分なんです」
「なんですかそれ笑、じゃあお言葉に甘えて」
私が洗い物をしている間に安室さんは自分の部屋に行って支度をする。
丁度洗い終わった時、安室さんが部屋から出てきた。
スーツ…
安室さんは時たまスーツ姿で家を出ていく。ポアロでスーツに行くなんてことは無いし、もう1つの方なのかとも思うけどそういう時は大抵パーカーだったり動きやすい格好だ。
でもあまり根掘り葉掘り聞いても仕方ないので特に何も言わないのだが。
かっこいいのだ
なんでもビシッと着こなしてしまう彼だが、スーツ姿は他のとは比べ物にならないほどかっこいい。
こんなこと絶対に言えないけれど。