第4章 友達
安室はキッチンへ行き冷蔵庫から冷えたペットボトルを取り出す。それを一気に飲み干し、ゴミ箱へ捨てた。
ふと、隣のゴミ箱が視界に入る。
またカップラーメン食べたな
何度言っても買ってくるのでもうそこまで怒りはしないが、彼女を不健康にはさせたくないものだ。
安室はソファに座りパソコンを開いた。
公安の仕事は大抵夜中やちょっとした隙間時間にしかできない。
部下がまとめた報告書に迅速に目を通していく。
無駄な作業は決してしない。
マウスに乗せた指が止まることはなかった。
一通り全部の報告書に目を通し酒でも飲もうかとソファから離れる。
棚の前に立ったところでいつもと違和感があるのを感じた。
─BOURBON─
自分では決して買うことはないだろうそれが、酒を並べた列の端に置いてある。
昨日まではなかった、となると買ったのはカホだ。
カホはこんな強い酒は飲めない。
自分に買ってきてくれたのだろう、と安室は気づく。
─だが、どうして─
安室はカホに自分のコードネームを教えたことはなかった。付き合う時も「安室透」と伝えた。
それは安室がなるべく彼女を黒の組織から離れた位置に置きたかったからだ。
もし何かあったとしても、ただの「安室透」の恋人だと言えるように。
これは偶然なのか
もしそうではないのだとしたら…
安室はバーボンのボトルを手に取った。
せっかく彼女が買ってきてくれたものだ。捨てるのはよそう。
彼女が黒の組織と繋がりがあるとは思えなかった。
自分が調べても過去にそれに繋がる点はなかった。
スコッチと並ぶバーボン
それは安室に幼い記憶を思い出させた。
たまにはいいか、
安室はキャップを開けグラスにバーボンを注いだ。
いつものスモーキーな香りではなく、甘い香りが漂った。
グラスを揺らし、タプン、と揺れるバーボンをじっと見つめた。
そして目を瞑ってそれを一気に呷った。