第26章 それぞれの気持ち
こう言ったことはその後も何度かあった。
軽いイジメのようなものも受けた。
カホはそれを最初エマには言わなかった。エマに心配かけたくなかったから。
けれど落書きをされたノートをエマに見られカホはエマに怒られた。
「何で言ってくれなかったの!カホ1人で抱え込むことないじゃない!心配かけたくないとか、そんなのどうだっていいのよ!影で苦しんでるほうが、よっぽど心配かけてるのよ!」
エマは泣いていた。
カホはエマの涙を見たのは今まででこれが最初で最後だ。
自分は大切な人を傷つけてしまったのだと胸がえぐられるように苦しくなった。
いじめなんかより、全然苦しかった。
「ごめっ…なさい」
カホは涙を流しながらそう言った。エマはカホをぎゅっと抱きしめた。
「次黙ってたら、ホントに許さないからね」
それ以降、カホはいじめを受けたらエマに話すようにしていた。
エマは大体の人物は検討がついていた。
カホが学校から帰った後、数人の女子のグループがカホのロッカーを漁っていた。
「何してんの」
女子達はその声に肩をビクッと震わせる。
「あ、なんだ…エマじゃない。いや、ちょっとね、カホに教科書借りてて」
「あんた達とカホって物貸すような仲だったっけ?」
「…っ」
「てか、あんた達でしょ。カホに嫌がらせしてんの。その歳になってまでそんなみっともないことしてんのね」
「っ!だってあの女、うちらが狙ってた男子次々と振ってさ!何様のつもりなのよ!」
「そんなのカホの自由でしょ。あんた達がカホを虐める理由にはなんないわよ。
というかこんなにコソコソやって、それこそバレたら好きな奴に嫌われんじゃないの?」
エマはそう言って携帯の再生ボタンを押す。
そこには目の前の女達がカホのロッカーを漁っている姿。
「これ消して欲しかったら、二度とカホに関わらないことね」
女達はカホのロッカーをバンッ!と閉めて逃げていった。
その次の日からカホへの嫌がらせは無くなった。
カホはそれを不思議に思っていた。
そんなカホにエマは、無くなったなら良かったじゃない、とだけ言った。