第26章 それぞれの気持ち
カホは13の時にアメリカに来た。
理由はよくある親の仕事の転勤によるもの。両親はカホに日本に残ってもいいと言った。けれどカホは大丈夫だ、と言った。決してそれは無理していた訳では無い。確かに中学で新しく出来た友達と離れるのは辛かったが、カホは見てみたかったのだ。日本とは違う外の世界を。
カホが転校先の学校に馴染むのは早かった。元々幼い頃から英会話スクールに通っていたカホはそこまで会話に支障をきたすことはなかった。
クラスメイトは日本から来たという転校生に興味を持った。色んなクラスの生徒がカホを見に数日扉の向こうで行列を作った。カホの姿を見て顔を赤く染めた男子が何人いたか。
瞬く間にカホの噂は広がった。
日本からとても可愛い転校先がやってきた、と。
それはカホの学校に限らず、他校までも広がった。
アメリカでは日本と違いほとんどの人が移住している学校区の高校に通う。
となると自然に近くの中学の生徒は1つの高校に集まることになる。
高校の入学式の初日、いつかも見たような光景がカホのいる教室の外に作られた。
教室の扉の向こうから自分の名前が聞こえると、カホは何とも言えない気持ちになった。
異国の顔立ちである自分を興味本位で見に来ているのではないか、と。
これは中学の頃から思っていたことだった。
国が違うのだから顔立ちが違うのは当たり前。
興味を持つのは分かるが大勢でジロジロ見られてはカホも居心地がいいはずがない。
自分の周りでどんな噂が流れているのか知らなかったカホはその光景を何度見ても慣れることはなかった。
カホは自分の机に乗っている手をぎゅっと握りしめた。
「ねぇ!貴方がもしかしてカホ?」
そんな時、横から聞こえた明るい声。
カホが顔を上げるとそこに居たのは綺麗なブロンドヘアを肩まで伸ばして目元がぱっちりとした何とも大人びた女の子だった。
「う、うん」
カホの返事に目の前にいる少女はパァァと顔に笑顔を咲かせる。
そしてカホの手をぎゅっと掴んだ。
「私、貴方とずっと喋って見たかったのよ!」
そう言って笑う少女がカホにはとても眩しかった。