第25章 はじまりは小さなカフェで
その後もカホは忙しなく働いた。
アーサーが出ていってしばらくしてから赤井はコップの中に残っていたコーヒーを飲み干すと席を立って入口へ向かった。
「ありがとうございました!」
カホは赤井の背中を見送った。
また来てくれるかな、
一瞬心にそんな思いが浮かんだ。
けれど後ろから聞こえた注文の声で意識はすぐにそっちへ向けられた。
「お疲れ様でした!」
オーナーにそう告げてカホはカフェの外へ出た。
帰りはいつも7時過ぎ。
真っ暗では無いが、青黒く霞んだ空がカホの上空に広がっている。
その空を見上げながらカホは家へと足を進める。
カフェから少し歩いて大通りから少し離れた小道に入る。
角を曲がった瞬間、パシッと手首を捕まれたカホはハッと振り向く。
そこに居た人物を見てカホは目を見開く。
「送っていってあげるっていったでしょ?ずっと待ってたんだよ。カホちゃんが来るの」
カホは口が開いて何かを言おうとするも恐怖で上手く声が出なかった。
そこに居たのが自分がついさっきまで恐れを抱いていたアーサーだったから。
「車近くに停めてあるんだ。早くそっちへ行こう」
「あ…、や…やめて、下さい」
「手、震えているけど、大丈夫?」
アーサーはカホの手をわざとらしくギュッと握る。
「嫌…離して、やだ、」
「何も怖がることなんてないんだよ?俺はただカホちゃんを送っていってあげるだけなんだから。ね?早く行こう」
「いやっ…!」
アーサーはカホの手をグッと引っ張る。
カホは進むのを拒み、やっとの事で大きな声で抵抗を示した。
その声にアーサーはチッ、と舌打ちをしてカホの口元を手で覆って壁に押し付ける。
「っ…」
背中に感じた痛みにカホは顔を歪ませる。
「いいねぇ、そういう表情もやっぱ好きだなぁ。このままここで犯すっていうのも悪くはないか」
「…!んんっ…んん」
カホはアーサーの言葉の意味を理解して必死に声を出そうとするも、塞がれた口から漏れるのはくぐもった切ない声だけ。
「はは、落ち着けって。すぐに気持ちよくなるからさ。その顔も、段々…」
アーサーはカホの顔に手を伸ばした。