• テキストサイズ

恋と麻薬【名探偵コナン】

第25章 はじまりは小さなカフェで


どこか親近感のある声に赤井はその声が聞こえた方を見た。

赤井のグリーンの瞳と彼女の真っ黒な瞳は確かに重なった。
彼女はニコッと微笑んで言った。

「お席ご案内しますね」

赤井は彼女の声に親近感が湧いた理由を理解した。

赤井にも流れているその国の血。
赤井は自分を席へと案内した彼女に尋ねた。

「日本人か」
「えっ…あ、はい!」

彼女は突然日本語で話しかけられたことに驚き、少し間を開けてから赤井の質問に答えた。

普段自分から誰かに声をかけることは少ない赤井だったが、この時はただの興味本位からなのか、赤井は会ったばかりの彼女に声をかけた。

「えっと、日本とのハーフの方ですか?」
「ああ、イギリスだ。ここら辺じゃ日本人を見かけることも少なくてな、つい」
「確かにここには全然いませんからね。私も外で久しぶりに日本語話しました」

そう言って微笑む彼女は赤井には今までの女と違って見えた。
純粋な、真っ白な、そんな空気が彼女からは出ていた。


おすすめのメニューを伝えてから彼女は厨房へと入っていった。
カウンターに座っている常連客と思われる老人に話しかけられて彼女は赤井に向けたのと同じ笑顔を浮かべて彼らと話し始めた。


赤井はメニューを開いて1番上にあったホットコーヒーを頼んだ。
さっきと同じ彼女がそれをテーブルに運んできた。

「ホットコーヒーです、お熱いので気をつけて下さい」
「ああ、ありがとう」

赤井はそれを受け取って一口飲んだ。

うまい


ここ最近飲んだコーヒーの中で一番美味しかった。
香りも後味もよく引き立っている。

穏やかな店内の雰囲気とコーヒーの味。

赤井はこのカフェが気に入りつつあった。


今度からここに来るのもいいかもな


赤井は大学を出た後の行先が増え内心ほっとしていた。
テーブルにレポートを広げしばらく何やら悩んだ後、覚醒したように赤井のシャーペンを持つ左手が休むことは無かった。

気づけば数時間が経っており、赤井がシャーペンを置いて辺りを見渡せば入店した時に見かけた客はほとんどいなかった。


長居しすぎたか


赤井も家以外の場所でこんなにも集中できたことに驚いていた。
赤井はよりこの場所が気に入った。


荷物をまとめて席を立つ。
扉を開ける直前後ろから再び彼女の元気な声が聞こえた。


/ 346ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp