第24章 "彼"
2人はお互いの近況を伝え合った。
ジョディは仕事で日本に来ていること。
カホは自分が今勤めている会社と両親が事故で亡くなった事を話した。
ジョディとカホが最後に会ったのはカホが大学生の時だ。
だからジョディはカホが社会人として働いている姿は何も知らなかった。
ジョディはカホの仕事での立場に流石ね、と言ってそれを祝福した。
カホの能力、性格を分かっているジョディはカホが就職活動中の時も貴方は将来大きく出世するんでしょうね、自分は望まなくても、と言っていた。
対して両親の話の時はカホの話を静かに聞いていた。
そして話終えたカホの手を握って
よく頑張ったわね
と言った。
カホからしても両親の事故の事を話すのは辛いことである。
だからジョディの自分の手を包んでくれる温かさがカホは心に染みた。
だが再会した今、2人が聞きたいこと、話したい事はお互いよく分かっていた。
再会を祝福して楽しく食事をしたい。
それはお互いの本音だった。
だから2人は料理を食べ終えるまでその話はしなかった。
それまではその話題を避け、たわいも無い話をした。
ウェイターが食事のコーヒーを2人のテーブルに運んだ。
真っ黒なアイスコーヒーにミルクを垂らしながらジョディは口を開いた。
「…私ね、知らなかったのよ。あなた達が別れたこと」
その言葉を聞き、カホはミルクを入れる手を止めた。
絶対避けられないその話題。
カホのその過去を知っている者は沖矢とコナンを除いて身近にはいない。
知っているとしてもその2人はカホに一切その話をしない。
しかしそれがジョディ相手となるとそうはいかない。
長年避けて、あまり口にはしなかった。
未だに腑に落ちない所はあるし、忘れられない部分もある。
それに最近はなぜか昴さんを見て思い出すことが度々あった。
今、彼はどうしているのか
元気なのか
カホは自分にはもう関係の無い話だと分かっていてもジョディに聞いておきたかった。
いつ命を落とすのか分からない彼らの仕事。
近況は分からなくてもせめて無事でいるのかは聞きたかった。
そしてジョディもカホのその思いは分かっていた。