第3章 居場所
今の状況に自分はどうしていいのか分からず扉の前から動けずにいた。
─ガチャ─
突然目の前の扉が開いた。
身体がビクッと震えた。
殺される
視界に入った拳銃を見てそう思った。
扉から出てきた彼は私の姿に一瞬目を見開いたが、すぐに笑顔になって、
「もしかして、今の聞いてました?」
と拳銃を額に突きつけて言った。
綺麗な瞳だな
拳銃をつきつけられながらもそう思った。
月の光が差し込み、彼の顔が照らされる。
こんな綺麗な青い瞳を持ってる人がいるんだ
彼の瞳に吸い込まれそうになった。
よく見ると彼はとても端正な顔立ちをしている。
所々血が飛んでいるがそれは彼の血ではない事が分かる。
さっき扉が開いた時、中で流血して倒れている男性がちらっと見えた。
ここで死ぬのかな
ふと自分の最期を悟った。
"彼"は今元気だろうか。例の女性と幸せに暮らしているだろうか。
お母さん、お父さん。もしかしたら私は今からそっちに逝くかもしれない。まだ四十九日にもなっていないのに。
死ぬ前日にあった出来事があんな事なんてなんとも情けなかった。そういう運命だったのだろう。
でも、最後に抱かれたのは"彼"だった
そう思うと少しだけ心に余裕ができた。
「怖くないんですか?」
目線を上に向けると銃口を突きつけたまま彼が少し不思議そうに尋ねた。
「怖くない、のかしらね…。なんかもう疲れちゃったから。」
「人生に、ですか?」
「ええ、だって何にもないんだもの。私の周りには。みーんな消えちゃったから。」
私は目を瞑ってふっと笑った。
本当に大切なものはみんな消えちゃったのね
「だからここで死ぬなら、そういう運命だったってことね。」
私は彼の方をみてニコッと笑った。
彼は少し目を見開いて、固まった。
そして、しばらくして
「そうですか、なら、
ここで殺されるか、僕と付き合うか、どっちがいいですか?」
と、また不敵な笑みを浮かべて私にそう尋ねた。