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恋と麻薬【名探偵コナン】

第23章 信用できる人


次の日、私は仕事帰りに昴さんの家に寄った。

朝家を出る前に安室さんにGPSを渡された。
もしかして昴さんと一緒に住んでいるのが分かったのは私にこれを仕掛けたからなんじゃないかと思って安室さんに尋ねた。

彼は意外とそういうとこ鋭いですよね、と。

数日帰らなかったこの家
インターホンを鳴らす指が震えた。

今日の朝に安室さんからスマホを返されて
昴さんからはいくつものメールと電話

ああ、また心配させてしまったと申し訳なく思った。


玄関の扉が勢いよく開いて
外にも関わらずガバッと抱き締められた。
いつもは優しく手加減してくれているけど今日は少し痛いと感じるほどで
色々と昴さんらしくないな、って

「ごめんなさい…連絡も無しに」
「心配したんですよ。とりあえず中に入りましょう」

そう言われて家の中に入った。

玄関で突っ立ったままの私に昴さんはどうしたんですか、と声をかけて

「ごめんなさい」

「連絡出来なかったのは仕方ありませんし、そんなとこいないでこちらに…」

「私、今日は荷物を取りに来たんです」

「…それは、この家を出て行くと言うことですか」
「はい、ごめんなさい急に、相談もせずに」
「家はもう決まっているんですか」
「…はい」
「ここに居てくれてもいいんですよ。今までそうしてきたじゃないですか、どうしてそんな急に」
「ごめんなさい」

さっきからごめんなさいしか言えない。
昴さんは玄関の方に戻ってきて私の前に立って

「理由をお聞きしてもいいですか」
「…」
「言いたくありませんか」
「…」
「でも私は急にカホさんが出ていかれるのに納得できません」
「ごめんなさい」
「だったら理由を教えてください」

考えればすぐに分かることだ。
1ヶ月一緒に住んできて、喧嘩もなくて何の不自由もなく穏やかに過ごして
仕事で帰れないと言われてやっと戻ってきたと思えば出て行くだなんて
そんなの昴さんが疑問に思うに決まってる。

でも言うのが怖くて
昴さんを傷つけてしまうのが嫌で
なかなか言い出せなくて

拳をぎゅっと握って俯いたまま口を開いた。


「…付き合ってる人がいるんです」
「…」
「その人と一緒に住むことになって」
「…」
「ほんとに…ごめんなさい」


彼の顔を見れなくて私はずっと俯いたまま。

工藤邸の玄関にはしばらく沈黙が続いた。




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