第23章 信用できる人
しばらく私は何にも言えなかった。
そんなこと安室さんに言う必要はないと思ったし何て言ったらいいのかも分からなかったから
その沈黙を破ったのは彼の方だった。
「その男に僕と付き合っていると言ったら何か問題でもあるんですか」
「…」
「ああ、もしかして…告白でもされました?」
私はその言葉に無意識に彼から目線を逸らしてしまった。
「なるほど…」
彼は顎に手を当てて何やら考えているようで
でもその表情には笑みが浮かんでいた。
「ならより一層言った方がいいですね
僕と付き合ってると」
「…言えません」
「なぜですか?」
「そんな彼を傷つけるようなことはできません」
「なぜそんなに沖矢昴を庇うんですか」
「それは、」
「僕がカホさんに好きと言っても信じてくれないのに、沖矢昴からの告白はちゃんと受け取るんですね」
「…っ」
「それに、カホさんは沖矢昴の気持ちを分かっていて一緒に住んでいたと言うことですよね。それでもって抱かれて…」
「安室さっ…」
「誰に対してもそうなんですか?」
「ち、違う」
「じゃあカホさんには危機感が足りてないんですかね。あぁ、そう言えばこんなこと前にも言いましたっけ」
安室さんは私の手を掴んで上で縛り上げた。
彼は片手なのにどんなに力を入れてもそれは解けない。
そのまま壁に押し付けられて上から見下ろされる形になって
「やっ…」
「振り解けないでしょう?男にこうされたらカホさんなんか簡単に犯されちゃいますよ」
「やだ…」
「僕はカホさんが別の男に触られるなんて耐えられません…。抱かれた男の元に帰るなんてそれこそ許せないんですよ」
彼の顔が近づいて彼の額が私の額に合わせられて
心臓の鼓動が速まって
息がかかってしまうんじゃないか
そんな至近距離で彼は言った。
「ね?だからちゃんと沖矢昴に言ってください。
安室さんと付き合ってるから彼と一緒に住むの、って」
首元に這う柔らかくて濡れた感触
つーっと彼が首元を舌で舐めて
それに私はゾクゾクと身体中に電流が走る感じがして
「…っ」
「返事は?」
「…はいっ…ぁ…」
安室さんが首元に軽くキスして
そこを舌でなぞられた。
簡単に彼に流されてしまう
そんな自分がいつまでも消えない