第18章 不測
病院を出て蘭ちゃんやコナン君、安室さんたちとしばらく一緒に歩いていた。
私の隣には安室さんがいた。
私の心臓はさっきから大きな音を刻んで胸に響いていた。
「では…僕らはここで」
ふと足を止めて安室さんが言った。
「あ、カホさんを送るんでしたよね」
「はい、こんな事件の後ですし1人は危険かと」
「ねえねえ安室さん!ボクも一緒に乗っちゃダメ?カホさんとまだ一緒に喋りたいことがあって」
「ちょっとコナン君!私達はもう帰るんだからカホさんとお喋りするのはまた今度にしなさい!」
「えぇ、今すぐ話したいことがあって…」
「もうワガママ言わないの、ほら、帰るよ!」
「待って…、離して蘭姉ちゃん!」
コナン君はじたばたしたまま蘭ちゃんに連れてかれて行った。
本当は一緒にいて欲しかった。
安室さんと2人きりなんて耐えられそうもないから。
「行きましょうか、カホさん」
「あの…やっぱり、」
私がその場で断ろうとすると左手をぎゅっと掴まれる。
「えっ…ちょっと…!」
「逃げられては困りますからね」
そう言うと安室さんは私の手を握って歩き出す。
振り払おうと思ってもその手はビクともしなかった。
彼に抵抗しながらも久しぶりに伝わる彼のぬくもりを感じてしまってる自分がいて、それを頭ではちゃんと分かってて…少し触れられただけでこんなに意識して
全然忘れられてなんかない…
彼の見慣れた車の前まで連れてこられて
彼は助手席のドアを開けた。
「どうぞ」
そう言って私が乗るのを待つ。
ここで乗ってしまったら、逃げられない
何をされるのか、何を言われるのか、
「会社まで送るだけですから」
私の考えていることを見抜かれたかのように彼はそう言った。
元々私は今日会社に戻る予定になっている。
もし私が戻ってこなかったら何かしらの連絡は来る。
それに誰かしら異変に気づいてくれる。
もし、殺されたとしても…
私は助手席に座った。
最後に乗ったのはいつだったか。
その時と何にも変わっていない、新品同様綺麗な車内。
運転席に彼が座る。
ブロロロと音を立てて車は発進した。
無言の車内で私はずっと窓の外を見ていた。
早く着くことだけを祈って、何も考えたくなくて。
居心地は最悪だけれど、もういっそこのまま時間が過ぎて欲しかった。