第17章 重なる※
何を言っているの…
昴さんはお風呂で私の体を洗うと言ってるの?
そんなの、無理に決まってる
「そんなの出来ません!」
「どうしてですか?また迷惑とか思ってるならそれは大丈夫だと言ったはずですよ」
「そ、そうじゃないです!」
「なら何がそんなに嫌なんですか?」
「そんなの…」
昴さんに裸を見られるからに決まってるでしょ!
この状況は流石にやりすぎなんじゃ、
手伝ってもらうとはいえ、異性でお風呂というのは危険な気がする。
昴さんだけど…さっきもなんかおかしかったし…
胸、とかあれは洗ってただけじゃない…
カホはふとさっきの光景を思い出した。
その時に自分が漏らした声が蘇りその記憶を忘れようとした。
カホは気づけずにいた。
沖矢が自分のスウェットに手をかけていることに。
ストン
急に足がひんやりとしたと思えばさっきまでの布が触れる感触がない。
え、どうして
自分が下に視線を向けて見えたのはグレーのスウェットでは無く肌色の自分の素肌。
そこでようやくカホは沖矢にスウェットを脱がされたのだと理解した。
「ちょっ…昴さん!」
「はい?」
「何してるんですか!」
「だって脱がせないと入れないですし、さっきから固まっていたので自分で脱げないのかなと」
「だからって勝手に…あっ…だめ!」
沖矢の手は今度はカホのショーツへかけられる。
カホは咄嗟に左手で沖矢の手を掴んでそれを阻止した。
こんなの…手助けを超えてる、
これが普通じゃないことぐらい、昴さんも分かってるはず
なのにどうして
カホはこの時完全に忘れていたのだ。
沖矢は自分の事が好きだと言うことを。
「下着を履いたままお風呂に入られるんですか?」
「違っ…そうじゃなくて、」
普段利き手じゃない左手で沖矢の手を掴むと言うのはなんとも違和感があった。
それにカホはどう答えていいのか迷っていた。
自分で脱ぐって言ったら昴さんの前で脱ぐことになる
じゃなくても既に脱がされそうなのに
この時間も恥ずかしい、
この場から去ってしまいたい…でも、逃げられない
2人の間に沈黙の時間が続いた。
カホは段々とこの場をどうこうよりも、沖矢に見られていることに羞恥心を駆られてきた。