第17章 重なる※
耳から異物感が消え、カホは乱れた息を整える。
昴さんに…昴さんに感じてしまった
この事実をカホは受け入れたくなかった。
誰にでもこんなに軽く流されてしまう
それを身に感じて自分を戒めた。
安室さんの時も、男の人と一緒に住むっていうのがどんな危険な事なのか分かっていたはずなのに
昴さんだから大丈夫だって
油断して
昴さんも男の人なのに
カホはそれを今になって強く感じた。
そんな時カホのスウェットに沖矢の手がかけられた。
「あっ…駄目ですっ…それは駄目」
「でもこのままでは下半身は洗えませんし」
「それは自分でやりますから!もう十分してもらったのでここからは自分で出来ます」
「全部するとお伝えしたはずですが」
「ほんとに大丈夫なので、それに汚いですし…何日もお風呂に入ってないのに人に触られるのは…」
カホは下半身までも沖矢に洗われる訳にはいかなかった。ただでさえ今の状況が恥ずかしいのにそんなことまでされたらもう今までのように沖矢と関われない気がしたのだ。
普通の同居人から、別の関係になってしまう、そんな気が。
現にカホはそれを一度体験しているのだから。
沖矢はそうですか…と手を顎に当てて何やら考え始めた。
その隙にカホは近くにあったバスタオルへ手を伸ばす。
が、その手はバスタオルを掴むことは無かった。
ガシッと掴まれたカホの腕。
カホは驚いて沖矢の方を見た。
「まだ、終わってないですよ」
そう言うと沖矢はカホの背中と膝に手を回した。
カホの身体はふわっと宙に浮く。
「えっ…やっ…」
沖矢はそのままカホの部屋を出て階段を下る。
カホは今の状況に困惑する。
沖矢の元から離れればいいのか、自分の肌を隠せばいいのか
何をしていいのか判断が追いつかない。
その間にも沖矢はどんどん足を進める。
ようやくそれが終わったのはお風呂場の前だった。
ストンと沖矢はカホを下ろす。
「昴さ…
「汚れを気にするなら、洗ってしまえばいいですからね」
「え?」
「まあカホさん1人では何かと不自由でしょうし、私がお手伝いする形になりますが」