第16章 思考
最後にカホを抱いたのが別の男だと言うこと
早く消してしまいたい
そいつの跡を
感触を
俺の手で
でも好きな女を無理矢理抱く訳にはいかない
しようと思えばいくらでもできる
でもそれは決してしてはいけない行い
カホは俺がこんなことを考えているなんて想像もできないだろう
最低だな、俺は
お前が悲しんでいる間にそこに漬け込んで、あわよくば手を出そうと考えているいるんだからな
カホが知ったら幻滅するだろう
沖矢昴は紳士かもしれない
でも俺は、紳士なんかじゃない
カホの事になると余計そうだ
手に入れたくて仕方ない
離したくない
鎖で繋いでおきたいぐらい
良い奴になんかなれる訳ないんだ
─カランカラン─
「いらっしゃいませ」
ポアロにベルの音が鳴り響く。
この時間はお客さんも少ない。
なので従業員も休憩に入ることが多い。
それはポアロの上に住んでいる俺なら尚更分かることで、
俺はそれを知ってて敢えてこの時間を選んだ。
目の前の男、安室透と話をする為に。
「やあ、コナン君。この時間に来るなんて珍しいね」
「うん、たまにはね」
俺はカウンターに腰かける。
案の定店内には常連客がちらほらいるだけ。
「オレンジジュースでいいかい?」
「うん!ありがとう安室さん」
しばらくして安室さんは俺の目の前にオレンジジュースを置いた。
それを一口飲んで、気持ちを落ち着かせる。
余計な事は、言うな
「あ、そう言えば安室さん。最近カホさん見ないけど、ポアロには来てないの?」
俺はふと思い出したように安室さんに尋ねた。
今朝、赤井さんからのメールを見て俺は驚いた。
カホさんと安室さんが一緒に住んでいた。
カホさんは黒の組織の一員なのか
一瞬そんな考えが浮かんだが俺は首を横に振る。
いや、あの人が組織の人間なわけない。
ならどうしてだ?
なぜカホさんは安室さんと一緒に暮らしていたんだ。
黒の組織の一員が一般人と同居などするのか。
もし組織のことがバレたらそれこそ厄介だし、その人物を消さなければいけない。
それに相手は安室さん。
彼がそんなリスクのある事をするだろうか。