第15章 語られる存在
─裏切りには…制裁をもって答える…だったよな?─
あの日の夜。
彼に告げたその言葉。
元から俺を毛嫌いしていた彼だったが、あの日からその憎悪は一段と増した。
俺がNOCだとバレてからは特に接触も無かったが、最近になって近くに現れた彼。
いつからだ
カホと彼はいつから関わりがあったんだ。
最近か?いやそんなはずない。
カホがあそこまで彼に気を許しているんだ
恐らく彼が周りに姿を見せる前からカホとは接触していたんだろう。
一緒に暮らすぐらいだ。
普通に知り合った、ぐらいじゃないだろう。
そもそも彼は組織の一員
バーボン
カホは安全だったのか?
組織に接触してなかったのか?
一緒に暮らしていたなら多少の支障は来すはず。
それを承知のうえで彼はカホと暮らしていたのか。
あの、秘密主義者の彼が
考えれば考えるほど分からない
なぜ一緒に住むことになったのか、どこで知り合ったのかも
赤井は彼女のスマホを机に置いた。
知らない男でも苛立つのに
その相手はバーボンか
赤井の心情は穏やかではなかった。
彼女の傍にいたのは自分もよく知っている男。
しかも黒の組織の一員
そんな彼にカホは身も心も奪われている。
気づけば握りしめた赤井の手には爪が深く食い込んでいた。
赤井は今ほどあの時別れなければ良かったと思うことはなかった。
他の男に、しかも彼にカホを奪われるぐらいなら
俺が、ずっと…
そう後悔しても過ぎたことは変えられない。
赤井の思いは行先がなかった。
恐らく彼はこの状況だとカホを探している。
カホは彼の家を出てきたと言った。
カホと彼はなんらかの理由で亀裂が走って今は良い関係ではないと言えるだろう。
カホを彼に会わせてはいけない。
今はそれが一番厄介なことだ。
しかし俺は彼女にあれこれと言うつもりはなかった。
仕事が楽しいんだろう。
家から出させない方法なんていくらでもある。
でもそれをしたら彼女の色んな物を奪うことになる。
そんなことはしたくない。
それに、この事も彼女には知られてはいけない。
俺が聞いた、見たもの全て。