第14章 訪問者
「カホさん」
「…」
「カホさん」
「…あ、はい!」
「大丈夫ですか?さっきからなんだかぼーっとしているようですけど」
「そうですか?全然大丈夫ですよ」
夕飯を食べ終えた後、ソファーに座ってテレビを見ていたカホに沖矢が声をかける。
テレビはつけたままだか、その意識はテレビの画面ではないようだった。
「お風呂先に入りますか?」
「いいんですか?」
「ええ、もう沸かしてあるのでいつでもどうぞ」
「じゃあ入ってきちゃいますね」
カホは扉を開けてお風呂場へと向かう。
段々と彼女の足音が遠ざかっていく。
沖矢は先程彼女が座っていたソファーに腰掛ける。
何があったんだ
沖矢は彼女の様子がおかしいことには気づいていてもその原因が分からないままでいた。
あれは、何か別のことをずっと考えているな
一つの事が気になるとそれにずっと集中してしまうのはカホの癖であった。
それは長い間カホを見ていた赤井にとっては何度かあったことでそれに関しては特に何も問題はない。
気になるのはその内容だ
ここはあいつを使うか、
沖矢はスっと立ってキッチンの方へ歩いていった。
─ガチャ─
「お風呂ありがとうございました。昴さんも入ってきて大丈夫ですよ」
お風呂上がりのカホがパーカーにショートパンツというラフな格好で部屋に入ってくる。
こいつは男と一緒に住んでいることを忘れてるのか
その格好に何か湧き上がるものを感じるも、沖矢はカホの警戒心の無さに軽くため息をついた。
「私は後で入りますので。それよりカホさん、これ、一緒に飲みませんか?」
沖矢がそう言って片手に持ち上げたのはお酒のボトル。
「あ、あの、私お酒弱くて…。あまり飲めないんです」
カホは申し訳なさそうに沖矢に言う。
沖矢にとってはこう言われるのは予想通り。
カホが酒に弱いことぐらい分かりきってることなのだから。
「これはウイスキーなんですけど、初心者の方でも飲みやすいものなんですよ。もし弱ければ、水割りやジュースなどを混ぜて飲むこともできますし、どうですか?試してみませんか?」
沖矢はニコッと笑ってボトルをカホの目の前に差し出した。