第14章 訪問者
そもそも俺は最初から赤井さんと彼女は初対面ではないだろうと疑っていた。
じゃなきゃ赤井さんがあんなに親しく関わろうとしないし、家に一人で呼ぶことだってしない。
何度か赤井さんに尋ねたことはあるが、いつも笑って誤魔化すだけ。
だが今回はどうだ
一緒に暮らす、しかも彼女に堂々と好きと伝える
俺の中に一つの考えが浮かぶ
赤井さんとカホさんは昔恋人同士だったんじゃないか
それなら赤井さんが彼女に近づく理由にもなる
ここは一つ、試してみるとするか
「残念だったね昴さん」
「何がですか、坊や」
「だってカホさんは安室さんと付き合ってるんだよ」
「え、ちょっと!コナン君、何言ってるの」
「ホー、そうだったんですか。安室君、ですか…」
「昴さんも!付き合ってる人はいないって言ったじゃないですか!」
「えー、違うの?カホさんと安室さんって仲良いからボクそうだと思ったんだけどなー」
「違うよコナン君!安室さんとはそんなんじゃないよ」
なんだかカホさんは予想以上に慌てて俺の言葉を否定している。
まあ実際そうなのではないか、と思ってはいたんだけど俺の考えすぎか。
それは置いといて、
これは当たりだな。
安室さんの名前を出した時に赤井さんの周りの雰囲気が変わったし、何より俺のこと軽く睨んでたからな。
今だってそうだ。
慌てるカホさんを見る目はなんだか面白くなさそうだし。
後で詳しく聞かないとな
一方カホはコナンの言葉に心臓が音を立てるほど焦っていた。
どうして、コナン君にもそんな風に思われていたの
突然彼の口から発せられた言葉は考えもよらないことで、
そんなの絶対バレたらいけないこと。
付き合ってたわけじゃない、けど私が安室さんと親しいと思われるのは何かと彼に影響を及ぼすのではないか。
それに、それに…
頑張って忘れようとしていた
けれど、こんな些細なことでまた彼を思い出してしまう。
ポアロにはもう行かない
大好きな場所だったし彼の作ったハムサンドだってまた食べたいけれど
もしまた彼に会ってしまったら、私は忘れられなくなってしまう
名前を呼ばれたら、もっと、って思ってしまう
だから絶対に行かない